医療制度 |
2003年6月18日(水) |
2003年6月18日(水)
●昨日は決まらず
昨日は物別れになり、結局結論は出なかったようです。今日が山になるのでしょうか。総理がどんな裁定を下すか、注目しています。
▼本日、総理裁定。
▼総合規制改革会議は医薬品をスケープゴートにした暴論。石原大臣に、もっとよく考えて欲しい。
▼今のコンビニでも開設許可をとり、薬剤師を置けば薬は売れる。夜間の国民ニーズには応えられる。
▼薬剤師人件費を削減し、調剤室をデッドスペースと考え、儲けることしか頭にない経済人に医薬品を任せないでください。
▼数年前に緩和したように、作用の緩やかな「医薬品」は「医薬部外品」に移行し、コンビニでも扱える。「医薬品」そのものはダメです。
▼特例販売業は廃止を含め、法の整合を図るべき。
2003年6月17日(火)
●小泉総理の決断は?
「コンビニで医薬品販売を可能に!」の問題については、総合規制改革会議側が「医薬部外品」ではなく「医薬品」そのものの規制緩和をと、強く主張してきました。しかし、坂口厚生労働大臣は、作用の緩やかなものについては「医薬部外品」に移行し、コンビニで取り扱うことも可能にするということが限界と主張。改革会議側に立つ石原大臣も、副作用のあるものまでとは言わない、作用の緩やかなものだけ扱えるようにする、と発言。これは多分、医薬品そのままで規制緩和せよ、ということだろうと思う。両者言い分は、似て非なるもの。最終的には小泉総理が決断し、どちらの方法をとるかを決めることになるのでしょうが、副作用のある「医薬品」をフリーにすることには、私は絶対反対です。
2003年6月13日(金)
●なんだか変な議論(総合規制改革会議)
知ってますか!今、小泉総理の諮問機関に総合規制改革会議というのがあって、そのメンバーはオリックスの宮内義彦議長さんらで、政治家は一人も入っていません。
経済再生、構造改革がさけばれる中で、旧態依然とした規制に守られて、ぬくぬくとやっているところにはメスを入れる。そして、自由に競争することで活性化を図ろう、というのがねらいなのですが、「でも、ちょっと待って!」という問題もその中に含まれていそうなのです。
医療や教育など12の重点検討項目というのが挙げられているのですが、その中のひとつに≪医薬品の一般小売店における販売を認める≫というのがあって、つまり、作用が緩やかな医薬品はコンビニなどでも販売を可能にする、というもの。
すでに、数年前に議論になって、作用の緩やかなものは「医薬品」から「医薬部外品」に移行させ、コンビニなどで扱えるように改正されているのですが、今回は「医薬品」そのものを規制緩和する、という話なのです。
そもそも「医薬品」は病気やケガを治す作用があるのと同時に、効果が期待できるだけに副作用も持っているのです。毒にも薬にもならないものは「医薬品」とはいいません。
会議がいうには、薬局・薬店などで、イチイチ注意すべきことを伝えてから、例えばパブロン(かぜ薬)などを売っている店はない。だからどこで売っても良いではないか、といった理屈。さらに夜中に子供が熱を出して、薬屋を探してもどこも開いていない。だから、24時間営業のコンビニに薬をおかせれば、便利でよい。
なんか変ですよね。これも例え話ですが、コンビニでフリーターの店員さんからパブロンを買って飲んだら薬疹(副作用)がでて、どうしたらよいかとたずねたら、「私に言われても分からない。箱の中に入っている紙に副作用がある、と書いてあるでしょう。メーカーに直接聞いてください。」これがコンビニの店員としては正しい答え(?)なのでしょう。
24時間営業のコンビニで薬が売れない!これはウソです。現在でも、コンビニが薬局・薬店の開設許可を取り、薬剤師を置けば売れるからです。しかも、その方が私たち消費者の立場にあるものとしては安心ではないですか。
こんな議論を聞いていると、コンビニに人件費の高い薬剤師を置かず、調剤室などという無駄なスペースを省き、医薬品(薬は儲かるらしいから)を売らせろ!と言っているように、私には聞こえるのです。
これは絶対おかしい。規制緩和は消費者、患者を守るものでなければならない。営業者の利益になることによって、経済が回復したって、犠牲になる私たちを誰が守ってくれるのですか。まさか決まらないと思うが・・・。
だから、永田町や霞ヶ関だけで法律や制度をつくらせない。私たちの声がきちんと届き、監視が効く政治が大事なんです。
2003年3月28日(金)
●基本方針
2002年7月に成立した健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)附則第2条第2項において、政府は、@保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系のあり方、A新しい高齢者医療制度の創設、B診療報酬の体系の見直し、に関する基本方針を14年度中(平成15年3月31日まで)に策定することとされた。
「基本方針」は、医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する今後の改革の基本的な方向を示すものであり、政府としては、この「基本方針」に基づき、今後、具体的な改革の内容を検討していくことになる。
「基本方針」最終調整には手間取ったようで、27日自民党部会、政審、総務会はクリアーされ、28日に閣議決定する予定。
要点は下記の通りです。
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医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針(骨子)
≪医療保険制度体系≫
1 基本的な考え方
(1)安定的で持続可能な医療保険制度の構築
(2)給付の平等・負担の公平
(3)良質かつ効率的な医療の確保
2 保険者の再編・統合
○被用者保険、国保それぞれについて、都道府県単位を軸に再編・統合を推進
@市町村国保
○都道府県と市町村が連携しつつ、保険者の再編・統合を計画的に進め、広域連合等の活用により、都道府県においてより安定した保険運営を目指す。
(被保険者管理や保険料徴収等の事務は引き続き住民に身近な市町村において実施)
A政管健保
○事業運営の効率性等を考慮しつつ、財政運営は、基本的には、都道府県単位
○自主性・自律性のある保険運営が行われるような仕組みの検討
B健保組合等
○規制緩和等による小規模・財政窮迫組合の再編・統合の推進
○再編・統合の受け皿として都道府県単位の地域型健保組合の設立
C地域での取り組み
○保険者、医療機関、地方公共団体等の関係者が協議して、医療計画、介護保険事業支援計画及び健康増進計画と整合性がとれた医療費の適正化に向けて取り組むための計画を策定
○医療の地域特性に起因して生ずる医療費の地域差部分については、地域における適正化努力を促すような仕組みを導入
○被保険者相談、地域の医療サービス等に関する情報提供、きめ細かな保険事業について都道府県単位で保険者が共同実施を推進
3 高齢者医療制度
○個人の自立を基本とした社会連帯による相互扶助の仕組みである社会保険方式を維持
○65歳以上の者を対象に、後期高齢者と前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな制度
・年金制度の支給開始年齢や介護保険制度の対象年齢との整合性
・一人当たり医療費が高く、国保、被用者保険の制度間で偏在
○これに伴い、老人保険制度及び退職者医療制度は廃止し、医療保険給付全体における公費割合を維持しつつ、世代間・保険者間の保険料負担の公平化及び制度運営に責任を有する主体の明確化を図る
○現役世代の負担が過重なものとならないよう、増大する高齢者の医療費を適正化
@後期高齢者
○加入者の保険料、国保及び被用者保険からの支援並びに公費により賄う新たな制度に加入
A前期高齢者
○現役で働く人も多い前期高齢者は国保、被用者保険に加入
○前期高齢者の偏在による医療費負担の不均衡を制度間で調整し、制度の安定性と公平性を確保
B世代間の負担の公平等
○現役世代との均衡を考慮した高齢者の適切な保険料負担
○後期高齢者の各制度からの支援は、社会連帯的な保険料で賄う
○後期高齢者に公費を重点化するという改正法の考え方を維持
Cその他
○高齢者の医療給付と介護給付の適切かつ効率的な提供とともに、自己負担の合算額が著しく高額になる場合の負担の軽減を図る仕組み
○保健、医療、介護等の連携による各サービスの効率化等を進め、医療費を適正化
≪診療報酬体系≫
診療報酬の基準・尺度の明確化を図り、国民にわかりやすい体系とすることを基本的な考え方として、以下の方向に沿って必要な見直しを進める。
@医療技術の適正な評価(ドクターフィー的要素)
医療技術については、出来高払いを基本とし、以下のような評価を進める。
○難易度、時間、技術力等
○栄養・生活指導、重症化予防等
○技術進歩や治療結果等を踏まえた医療技術の評価、再評価
A医療機関のコスト等の適切な反映(ホスピタルフィー的要素)
入院医療について必要な人員配置を確保しつつ、運営や施設に関するコスト等に関する調査・分析を進め、以下のような取り組みを進める。
○疾病の特性等に応じた評価
〔急性期入院医療〕
・疾病の特性及び重症度を反映した包括評価
〔慢性期入院医療〕
・病態、日常生活動作能力(ADL)、看護の必要度等に応じた包括評価
〔その他〕
・回復期リハビリテーション、救急医療、小児医療、精神医療、在宅医療、終末期医療等の適切な評価
○医療機関等の機能に応じた評価
〔入院医療〕
・臨床研修、専門的医療、地域医療支援等の機能や入院期間等に着目した評価
〔外来医療〕
・大病院における専門的な診療機能や紹介・逆紹介機能等を重視
・診療所及び中小病院等におけるかかりつけ医・歯科医・薬剤師の機能、プライマリケア機能等を重視
B患者の視点の重視
○情報提供の推進
○特定療養費制度の見直し等患者の選択によるサービスの拡充
Cその他
○歯科診療報酬
・口腔機能の維持・増進の観点からのう蝕や歯周疾患の重症化予防等
○調剤報酬
・医薬品の適正使用の観点からの情報提供や服薬管理の適正な推進等
○薬価・医療材料価格制度等
・薬価算定ルールの見直しの検討、医療材料の内外価格差の是正
・医薬品等に係る保険適用及び負担の在り方の検討 等
≪改革の手順・時期≫
(改革の手順・時期)
○医療保険制度体系に関する改革は、平成20年度に向けて実現を目指す
・実施可能なものは逐次実施
・法律改正を伴うものは、概ね2年後を目途に順次制度改正に着手
○診療報酬体系に関する改革は、次期診療報酬改定より逐次実施
○社会経済情勢の変化、医療保険、国、地方の財政状況の推移等を充分に勘案
○地方公共団体、保険者、医療関係者等を含めた国民の意見の聴取
○年金制度、介護保険制度等の改革や政府の経済財政運営の方針との整合性の確保
○現行制度から新制度への円滑な移行
(総合的な医療制度の改革)
○この基本方針のほか、先般の改正法附則第2条に規定されている医療及び医療に要する費用に関する情報の収集、分析等の体制の整備、保険給付の内容及び範囲の在り方等の課題についても引き続き検討を行い、医療制度の改革を総合的に推進
以上
2002年5月15日
●健康保険法等の一部を改正する法律案(概要)
こんにちは、松本純です。
私は社会が安定するのに最も重要なものは社会保障制度だと考えています。
今般すでに国会に上程されている下記課題についてご報告します。
診療報酬改定に対して皆様よりたくさんのご意見ご要望をいただきました。頂戴した ご意見は直接厚生労働省保険局へ、現場の声としてお届けさせていただいております。
今後も引き続き改善すべき点などについて主張してまいりたいと存じます。貴台 からのご意見もお待ちしております。
▼健康保険法等の一部を改正する法律案(概要)
さて国会の状況はさまざまな不祥事が続き混迷を極めております。改革政策を訴え
るにも政治そのものが信頼を失えば国民の理解納得を得ることはできません。外にい
て歯がゆい思いでいっぱいです。
しかし慎重に審議してもらわなければならない重要法案も目白押しです。
特に健保
法等の一部改正についての審議状況は如何かと問い掛けていたことに、5月15日衆議
院厚生労働委員会委員長の森英介衆議院議員からメールが届きました。それによると
一連のゴタゴタの煽りで定例日が二、三回飛んでしまい、会期延長しない限り、今国
会での成立が危ぶまれるようになってきているとのこと。会期延長があるかどうかは
不透明。会期延長が無かったとしても、早期に臨時国会が開かれることになるだろう
と推察されていました。
そして議論のポイントについては、審議入りしたばかりなので、未だ総論的な議論
の段階ですが、ポイントはやはり改革をおざなりにした負担増に対する批判だそうで
す。ただ内容的には民主党もAgismの排除等割合現実的な議論を展開しているようで
す。
皆様は既にご承知と思いますが今回提出された健保法等の一部を改正する法律案の
概要について、その骨格(抜粋)をご報告させていただきたいと思います。
《健康保険法等の一部を改正する法律案》
T高齢者医療制度の改革
1.患者負担の見直し(平成14年10月実施)
@ 高齢者は定率1割負担(一定以上所得者は定率2割負担)。外来の月額上限制及び
診療所定額負担選択制は廃止。
A 自己負担限度額は低所得者に配慮。
2.老人医療費拠出金等に係る見直し(平成14年10月実施)
@ 老人医療対象年齢を70歳以上から75歳以上に5年かけ段階的に引き上げ。
A 公費負担割合を3割から5割に段階的に引き上げ。但し一定以上所得者は公費負
担対象としない。
B 老人加入率(原稿30%)の撤廃。
C
退職者の老人医療費拠出金は退職者医療制度において全額負担。
D
保険者の老人老人医療費拠出金持ち出し額割合を一定範囲に止める調整措置は
現行通り。
3.老人医療費の伸びを適正化するための指針(平成14年10月実施)
U医療保険制度の改革
1.保険給付(患者負担)の見直し
@ 7割給付で統一(平成15年4月実施)。
A 外来薬剤一部負担の廃止(同上)。
B 3歳未満乳幼児8割給付(平成14年10月実施)。
C 自己負担限度額見直し(同上)。
2.保険料の見直し(平成15年4月実施)
@ 賞与を含む総報酬制を導入。
A 政管健保保険料率は82‰へ。
3.国民健康保険制度の財政基盤の強化
Vその他
1.医療保険制度の改革等
2.関係制度の改正
3.その他
となっていますが、これでも財政調整を超える抜本改革とは言い難いと思います。
国民皆保険制度を堅持することが命題ですが、全く違う角度からの発想を必要としてい
ます。
本質を突く提案を皆様と共に構築し中央を動かしていこうではありませんか。
1999(平成11)年9月1日
●社会保障制度の抜本改革を進めなければならない。
戦後50年余、人口増と高い経済成長に裏付けられてきた今までの社会保障制度も21世紀を目前に控え、未曾有の急速な少子高齢社会の到来により、制度の抜本的な見直しが必要となっています。介護険制度のスタートをはじめとして、新世紀を見据えた年金、医療、社会福祉、少子化対策、高齢者対策等、平成12年(西暦2000年)度からの実施を目指しています。それは、来るべき21世紀において、日本国民が信頼できる安定した、さらに理解と納得のいく新たな仕組みをつくり上げることが求められているからです。
はじめに社会福祉ですが、これまでの基本理念どおり社会的弱者に対する税による措置は必要で、その内容の充実やサービス提供者の規制緩和等について検討する事が必要です。
介護保険は、いよいよ来年4月より開始されますが、社会的入院の医療保険からの分離や、介護も家族だけに委ねることの困難から、社会全体で助け合うことの必要性については、論を待たないところです。保険者となる市町村が、独自性をもった地域密着型のサービスを提供することが重要です。今年10月から介護認定が始まりますが、心配されているのは保険料がいくらになるのかということ。調整交付金の少ない保険者は、マイナス分を1号被保険者にのせなければならない不合理を、解決するためには、保険料設定の外枠から国費による応援が必要になるでしょう。
医療については、いつでも、どこでも、だれでも、皆等しく医療を受けることができるというフリーアクセスの確保のため、世界に冠たる国民皆保険という制度の堅持が大切です。平成7年度に27兆円だった国民医療費が、今のままではわずか30年後の2025(平成37)年度には3倍を越え104兆円になると予測されていますが、この医療費の伸びの抑制と医療財源と医療資源の適切な配分が改革の基礎となるべきです。そこで、三者の理解と協力、つまり医療機関、被保険者、保険者が各々の問題点を謙虚に受け止め、さらに国が協力して国民皆保険制度を堅持する強い意志を持って取り組まなければなりません。薬価制度は薬価差を無くす努力、診療報酬は、モノから技術へ、医療提供体制は、慢急性期をはじめ各医療機関の役割分担を明確化し、高齢者医療制度は、コスト意識をもつことが出来る定率制の導入、などについて全体の整合性を得つつ、速やかに、それらの方向性を示すことが求められています。
年金制度は国が存続する限りつぶれません。国民特に若人に誤解されているようです。基礎年金部分については国費の導入を1/3から1/2に引き上げることを決めたところですが基本的には税負担に頼らず保険としての性格を大切にすべきだと考えます。さらに補完のために確定拠出型年金の導入や高齢者雇用の促進策を検討していく必要があります。
少子化については、現在合計特殊出生率が1.38まで低下しており、2007年をピークとして、わが国の総人口は急速に減少します。近い将来には、国民全体で支える社会保障制度の危機や労働生産性の低下が危惧されています。女性の社会進出を推進しつつ、出産に対する分娩費の国費からの支出、育児休業制度、保健所の整備、教育費支援等の出産・子育て環境の充実が必要です。また、出産の大切さや子育ての喜びを両親、学校、地域がよく理解し、モノや快適性を追求する風潮から脱して、われわれ自身の「未来への夢づくり」が大事です。だからこそ、給付と負担の適正化が声高に叫ばれているところであります。
このように給付や措置やサービスという供給面に対して施策の見直しや充実を図る一方で、社会保障の経済効果についても無視することは出来ません。押さえるばかりではなく、給付を保証した上で、必要に応じ、機動的な支出も必要であり、そのための積極的施策が必要です。また、誰が誰を支えるのかを明確にし、どこまで国の責任があり、自己責任についてはどのように考えるのかという、公と私の分担についても、改めて考える必要があります。
1999(平成11)年7月14日
●医療制度抜本改革の論議経過と今後の行方
抜本改革の必要性について
右肩上がりでの経済成長が難しい中で、医療保険も厳しい財政状況になってきています。現在、保険料は経営者側と被保険者側とで負担していますが、給料が抑えられ、リストラが進む中で、今後保険料収入が膨らむとは考えられません。
少子高齢化はいうまでもなく進み、2007年をピークに全人口は減少していきますが、その中で高齢化は進む一方です。このままでは医療費そのものも、2000年には30兆円を超えて2010年には54兆円、2025年には104兆円という膨大な金額に達するということが試算されています。
もはや何もしないということはできませんし、目先の手直しではすまされない、医療保険制度の抜本改革が必要ということになり、平成12年4月の実施にむけて議論が進められています。国会議員はこれを共通の理解として持たなければならないのですが、そういう同僚議員はいまだ多いとはいえず、実はもっと本腰を入れてほしいというのが本音であり、私自身歯がゆい思いをしているところです。
先般の健保連のストライキ(老人保健拠出金の延納)についても、医療基本問題調査会の丹羽会長は激励という受け止め方をされておりましたが、一部ではルール違反ではないかとの議員もいます。私は健保連の皆さんの切々たる思いを受け止めて医療保険制度を抜本的に変えていくことが必要だと思いますが、議員の中には皆さんの厳しい状況を受け止めきれず、現状についての認識に甘さがあるといわれれば、そのとおりかもしれません。
なかなか定まらない改革の方向
現状の医療保険制度で改革が迫られているのは医療提供体制、薬価制度、診療報酬、そして高齢者医療制度の4本柱です。このうち、平成8年から9年にかけて、様々な議論がなされたのは薬、特に薬価差の問題でした。早く手を打たなければならないところから対応しようということで、薬剤の一部負担をお願いするとの議論が出たのです。これにより高薬価シフト、多剤投与をおさえることがねらいでした。医療抜本改革までのつなぎとして、保険財政を考え、無駄を排することはおおいに賛成という立場をとりました。その結果、ややこしい計算方式とはいえ、平成9年9月に健康保険法の一部改正がスタートしたのです。
その後、引き続き抜本改革についてさまざまな議論がなされましたが、そのなかで4本柱を同時に議論され、完成させないと、いろいろな不都合が生じるとの意見が出てきました。例えば、薬価差を無くすのは良いが、それでマイナスした分をどうするのだという意見が医療機関側にはありますので、片方だけ決めて、あとは知らないというのでは困る、そんな不信感のようなものが医療機関側にあるのも事実です。そこで4つのことを同時スタートさせるということで、自民党内部の医療基本問題調査会で議論されてきました。しかし、4つを平行に議論すること自体がなかなか困難です。例えば参照価格制度については、薬剤師会としては条件付き賛成という考えを当初示しましたが、医師会は真っ向から反対という意見でした。その後、薬価制度については、各関係団体から様々な提案がなされ、それぞれの意見が平行線をたどりました。その結果、医師会の案も厚生省が出した参照価格制も米国製薬メーカーが出した自由価格制についても全てをいったん白紙に戻して違う方法を考えようということになってしまいました。議論が始まると混沌につぐ混沌で、コメントを出すことも難しくなり、4本柱をひとつずつ進めながら4つを検討するということはできず、残念ながら、いまだに結論がでていないのが現状です。ですから公式文書というものは、このところずっと出されていません。
ただ、6月4日に自民党内部の医療基本問題調査会の席上で、丹羽会長が非公式ですが、メンバーにプリントを示されましたので、その内容について少しコメントを加えながら報告いたします。
医療提供体制の改革について
医療提供体制について改革を迫られているのは、入院施設の整備、病床の機能分化、医療における情報提供の推進、診療情報の開示、医療機関に関する情報の適切な提供のあり方、そして医療従事者の質の向上が上げられています。また、末期医療のあり方についても検討が迫られています。
薬価制度の改革について
1.薬価算定方式等の見直し
@
薬価差の見直しと薬価改定の見直し
・現行R幅方式を抜本的に見直して薬価差を無くすとともに、薬価改定の頻度についても見直すことがあげられ、これについては医師会も認めたところです。仕入価の調査については、その頻度を見直そうということですが、回数としては1年に1回見直しを行うということが認められています。
A
薬価算定方式について、以下の視点を踏まえて見直し
・画新的新薬に対してはこれまで画期的新薬に該当する新薬が1種類しか認められておらず、もう少し幅広く承認をしていってもいいのではないかとの考え方です。適正な評価をして、それについては別の加算を考え、メーカーがチャレンジしやすい状況を作るべきだとの意見があります。
・長期収戴品目については、後発品市場を育成し、安い薬が安心して使えるという環境を作り出していくことが求められており、さらに公正な競争ができるような環境を築いていくことが重要です。
・新規性に乏しいいわゆるゾロ新と呼ばれる新薬については、薬価算定方式を適正化することも必要であるとしています。
2.診療報酬での対応
医師会では薬価差をなくした分を技術料で評価をしないと、今までと同じ運営ができないと主張しています。平成8,9年あたりの薬価差はRを含んで1兆円を超える価格になります。医薬分業が進み、薬価差そのものは縮小してくる傾向にあり、厚生省によると平成11年度末の薬価差は4700億円程度としています。試算がおかしく、もっとあるはずだというのが医師会の意見で、この価格差をどうするのか、これがベースになるため議論が続いていくことになるでしょう。
3.製薬産業の研究開発力の強化
例えば、H2ブロッカーの開発によって、手術が少なくなったとの実例があります。良い薬ができると安い医療費で治療ができるということから、メーカーが開発に力をいれられる状況を作るということは国家的な戦略としても大切です。
4.薬剤に関する情報提供の推進
処方箋の中身を医師、患者さん、薬剤師と三者が見る。それだけでも重要な意義があります。医薬分業については患者さんにとって不便だ、病院のなかだけでもらえれば安いのに調剤薬局と両方の支払い分を足すと高くなってしまう。あるいは薬があると思って行った調剤薬局に薬がなかった。そういった批判が出ています。しかし、現実にはこの3年間の流れを見ると、処方箋は平成7〜9年では前年より3000万枚、4000万枚、5000万枚という勢いで増え、現在全体で4億枚といわれています。1年間で5000万枚増えるということは、技術を持った薬剤師が毎年新規に5000人必要ということです。つまり当分の間、薬剤師を教育補充していかなければならないという混乱期にあります。現実には慣れていないがために薬剤師のミスなども生じる可能性がありますが、厚生省からも支援してもらいながら、重要な役割を担えるよう、薬剤師会を中心に努力をしてもらわなければならないと思っております。
現在、4億枚の処方箋に対して約2%、800万枚の疑義照会があります。このうち400万件は事務的なものでもう半数は処方内容についてで、その件数は毎年のびているとのことです。疑義照会の内容で最近増えているのは、重複投与、年齢に不相応な薬剤が出ている、こんなことの確認が多くなっています。処方箋の確認により国民を薬害から守るという一定の役割を果たしているということを確信を持ってお伝えできると思います。
情報公開というものも将来的には電子機器などを取り入れてカード化することもすばらしいことですが、すぐに全てに対応することはできません。今あるものを使っていかに効率よく合理的にやれるか、そしてさらに複数の医療機関からでている処方箋をかかりつけの薬局で管理できるようになれば薬の重複使用なども防ぐことができ、無駄な医療費をおさえることにもなると確信しています。
薬剤の質や効果、副作用、分類、価格など、薬剤に関する情報を患者、医療機関等に提供する、特に品質評価マニュアル(オレンジブック)の発行については、現在第一段の内容が公表されたところです。
5.薬剤負担のあり方
別途徴収方式は二重負担ともいわれ、廃止して新たな方策について早急に検討すべきとされています。これについては平成12年度の抜本改革が完成するまで続けるというのが平成9年度までの基本的考え方でした。平成11年7月に高齢者の薬剤負担を取りやめており、一部乱れが生じてしまっていますが、この影響については、なかなか情報は得られません。ただ平成9年9月の改正では薬剤負担が生じたにもかかわらず、現実には高齢者の受診抑制は起きていない、つまり、受診機会を奪ってはいないこと、これは訴えていかなければならないことだと思います。その一方で薬剤の数が減ったという実績もあります。
6.薬価算定の透明性の向上
現状では、品質のよいものも悪いものも一定の値段の決め方をしているというふうにも聞いています。中医協の中に薬価算定に関する組織を設置することで、見えない決め方を透明にしていく、これには私も賛成です。
7.審査、承認の透明化、迅速化、安全性の確保
これらは世界的な趨勢に合わせるものであり、国際競争に勝つうえでも大切だと思います。
8.医薬品流通の近代化
仮納入、仮払い問題の是正、不適切な取り引きの改善なども必要です。
診療報酬の改革について
診療報酬については「もの」より「技術」を重視する等の観点から現在の体系を見直し、医療機関の経営の安定化と効率化を図るという観点からしっかりした議論が必要だと思っております。
技術料の適正な評価を進めるとともに医療機関の機能分担と連携を促進し、病院と診療所、医療と介護、国公立病院と民間病院などの機能の分担を図ることとしています。また、高額医療機器等の適正配置や共同利用を進めること、医薬分業を適切に推進することも欠かせません。医薬分業では、かかりつけ薬局の育成、院内薬局のあり方等の観点から、現状の問題点の把握、検討を行うこととしています。
いわゆる入院患者の早期退院問題、付添い看護婦の実態の是正、疾患の特性に応じた投薬日数のありかたについても検討を行うこととしています。
こうした改革を進めるとともに、報酬については、出来高払いと包括払いの最善の組み合わせを検討すること、検査医療機器、医療材料の価格の適正化を進めること、歯科医療の評価をどうするかを検討することとしています。これらの問題については歯科医師会から不満の声があがっています。内科と歯科では薬の使う量が全然違い、歯科医は薬をそんなに使わない、となると薬価差はあまりない。歯科医は手厚くする必要はない、という単純な決め方では困るというのが歯科医師会の意見です。全体の基本料を含めてもう一度見直すべきとの要望が上がっています。
高齢者医療制度改革について
寝たきり、あるいは医療にかかる人が少なくなれば、医療費が減るということで、健康管理、健康増進の推進があげられています。また、老人医療の効率化とともに高齢者の患者負担のあり方が重要です。この2つについては、問題が山積していますが、私個人の考えでは一定の負担をして頂くのが妥当であろうと考えております。老人医療を支えるしくみのあり方も重要な課題です。これについては現在2つの考え方が示されています。一つは国保と縁を切り突き抜けで行こうという健保連の考え方です。もう一つ、医師会が主張している考え方で75歳以上の老人の部分だけ別建ての保険を創設し、それについては保険料と自己負担を合わせて10%程度を被保険者が持ち、残りの費用は公費で面倒をみるというものです。いずれも一長一短があるように思われ、今後より深い議論をしていかなければならないと思います。
さて先行した参照価格制度の議論のたたき台は、平成8〜9年の自・社・さの与党協のまとめが基本になりました。それにのっとり、厚生省あるいは医療保険福祉審議会が議論をして出してきた答えがいわゆる日本型参照価格制度です。それに対して審議会が勝手に決めるのは何事ぞといった意見が議員のなかに起こり、改革をするのは政治側にあるのだということになり、原案は白紙になってしまいました。いったん役所に投げられたボールが政治に戻り、それを政治自らが白紙撤回にしてしまったのです。現状では議論は進んでおらず、大変残念ですが新しい報告ができない状況です。政治側に権限ありと主張するのであれば、政治家がきちんと責任をとらなければなりません。ここまで示してきた6月4日の丹羽私案の線でおおむね流れていく可能性が大きいと思われますが、皆様には今後行われる論議を十分に吟味して頂きたいと思います。そして、国民にとってどんな医療改革が必要かという視点で、ともにがんばっていきたいと考えております。
1999(平成11)年7月30日
●「月刊自由民主」取材
国民皆保険制度の堅持を
私は横浜市会議員を3期つとめるとともに、地域活動として地元薬剤師会長、街おこし運動や福祉問題に全力投球してきましたが、政治への壁を感じ、平成8年の総選挙で国政の場に送り出していただきました。
当面の課題としては、今問題になっている医療保険制度の抜本改革にありますが、昭和36年からスタートした国民皆保険制度はどうしても堅持しなければなりません。
我が国はこの独自の皆保険制度によって世界に冠たる長寿社会を実現してきました。この実績を今後とも継承発展させ、21世紀の少子高齢化社会を乗り切る必要があります。といっても、労働人口の減少、出生率の低下、そして扶養される高齢者の激増といった現象が見られる中で、国民皆保険制度をどう組み立てていくのか、これは大変な問題です。
我が党は7月29日の党医療基本問題調査会と社会部会の合同会議で、2000年4月から原則70歳以上の患者に対し、かかった医療費の一割程度の負担を求める方針を決めました。現在、外来患者は診療にいくらかかっても1回あたり530円(月5回目からは無料)の定額制をとっていますが、これを定率制に改め医療費の増加を抑制するのが狙いです。ただ、患者負担が過大にならないよう月間上限額を新設します。同時に薬の種類に応じて支払う薬剤の別途定額負担は廃止することになりました。
医療保険制度の抜本改革をめぐって政府・自民党は、薬剤費を抑制する方策として、現行の薬価基準制度を廃止し、効能別などで一定額を設け、それを超える分は患者負担とする「日本型参照価格制度」の導入を目指していました。しかし、医療関係者や製薬団体などからも様々な提案がなされ、今年4月に白紙に戻した経緯があります。
我が党が決めた方針はその代替案ともいうべきものですが、定率制に踏み切ったのは、年々増加する老人医療費を抑制するには、定率制を導入するしかないとの声が高まってきたからです。健康保険組合連合会が、このままでは破綻すると我が党に訴え、厚相の諮問機関である医療保険福祉審議会でも日本医師会の委員を除くほとんどの委員が定率一割負担の導入を決めていました。
今回の定率制の導入は、改革への第一歩ですが月々、3000円程度の上限を設けることが前提となっています。高齢者への負担増を懸念する医師会に配慮したためでしょうが、「これでは医療費の抑制効果は疑問。保険財政の建て直しにはならない。」という上限を決めることに反対する声もでています。
また、70歳以上のお年寄りは、特別惜置として7月1日から薬剤費の別途負担が免除されています。現行の薬剤費別途負担が若年層も含めて全面的に廃止されれば、患者の負担は軽減されます。ただ、別途負担は患者のコスト意識を高め、必要以上に薬が処方されるのを防ぐ目的で1997年に導入されたばかりです。ですから、別途負担の全廃は薬剤費増加の歯止めがなくなり、薬剤費を含めた医療費を引き上げる要因にもなりかねません。今回、党でも方向性を示した上限付きではありますが、定率制を導入することは、薬に対してもコスト意識を持ちつづけていくことに資すると思います。
政府・自民党は今後、投薬すればするほど医療機関の収入が増える「薬価差益」の解消や、大病院の診療報酬も見直し、高額療養費制度の支払い限度額(現行で63600円)の引き上げも検討する方向です。
我が党で医療保険改革が急がれる背景には、毎年1兆円ずつ国民医療費が増え続ける一方、バブル崩壊後、医療保険は保険料収入が伸び悩んで赤字に転落したという深刻な事情があります。
因に2000年になると31兆円の医療費がかかり、2010年になると54兆円、2025年で104兆円という膨大な数字に膨れ上がります。人口ピークは2007年で、それから人口は減ってきますが、高齢化率は下がらず2025年ごろがピークを迎えます。
ですから少なくとも2025年ごろまで先を見越した国民が本当に安心して暮らせる医療体制を構築しなければなりません。いつでもどこでも、誰でも、どんな病院にもアクセスできる世界に類を見ない国民皆保険制度をどのように組み上げるか、その現実に向けて後世に恥じることのないように、これからも真摯に努力していくつもりです。