松本純の備忘録・リポート

2023(令和5)年

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2023(令和5)年9月14日

dgs-on-line.com

出典:ドラビズfor Pharmacy 2023914日】397

【どうなる改定】松本純氏(前衆議院議員)に聞く

「消費税が上がった時以上の大議論巻き起こる可能性」

 「消費税が上がった時以来の大議論、いや、時代背景を考えるとそれ以上になるだろう」――。数々の改定に深く関わってきた松本氏の目から見ても、年末に迫ったトリプル改定はそう映る。“時代背景”の1つは、いうまでもなく少子化対策。安定的財源確保については、こども未来戦略方針(令和56月)によれば社会保険の賦課・徴収ルートを活用し2028年までに「支援金制度(仮称)」を構築することとし、詳細について年末に結論を出すとされている。ただ、そこに至るまでには「歳出改革等による財源確保」と「経済社会の基盤強化」が必要ともされている。医療費にどのような影響が出るのかは関係者が抱く懸念だ。松本氏は、「医療従事者の賃上げ要望が強い中ではプラス改定の流れではあるが、そんなに簡単ではない。ちゃんと見ておかないと危なっかしくて仕方がない」と指摘する。ただ、松本氏は「少子化対策は絶対に必要」と指摘し、特に少子化は相対的な大学への修学の減少につながり、薬学・創薬の観点からすると、理系の学生の減少が起きた時に、「学術の水準を落とすことにもつながる」と懸念する。

 医療費の財源別構成(2020)は、公費 38.4%、保険料 49.5%患者負担その他 12.1%。「このバランスが崩れるほど大きな影響を与えることはたぶんできなくて、役所も苦しんでいると思う。まだ役所の中にも答えはないのではないか。想像でしかないが、“違うお財布”をつくるとか“手品”をするしかない」と指摘。少子化対策は不妊治療など、医療の中に対策費を“再掲”として取り入れることなどもできるとしつつも、「皆保険制度が堅持できるかできないかにも関わる議論になりかねないのではないかと思う。これは大議論になるような気がする。その一方で、逆にシャビーな動きで終わってしまう可能性も否定できない」と、不透明感が強いことを指摘した。

 財務省との折衝を綿密に行うことが「絶対に大事」とする。ギリギリの折衝になった時に「何がどう影響するのか」の機微が分かっている関係者がいないと思わぬ結果を招くことにもつながりかねない。松本氏のこれまでの経験からも例えば医科・歯科・調剤の「11.103」の配分が持つ政治的な意味を理解している政治家は思っている以上に少なく、また薬局を経営したことがある薬剤師の政治家でないと、なかなか財源の話に目が向き、現場感覚としても実感していることにつながらないとの危惧も示す。薬剤師でなくても4期生・5期生の国会議員の中には政治的な“センス”が目を引く政治家がいるとして、勉強会を開き始めているという。「数が多くなくてもいい。テーブルで見渡せるぐらいの政治家に理解を深めてもらうことは重要」(松本氏)。当然、日本薬剤師連盟の組織内候補である国会議員の二人を育てていくことが大命題であるものの、人脈・経験を育む間の理解者の存在が薬剤師業界の行方を左右する。


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