松本純の会議録

1998(平成10)年5月27日

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第142国会-衆議院厚生委員会-14号

平成十年五月二十七日(水曜日)
 午前九時一分開議

出席委員
委員長柳沢 伯夫君
理事佐藤 剛男君理事長勢 甚遠君
理事根本  匠君理事船田  元君
理事金田 誠一君理事山本 孝史君
理事福島  豊君
安倍 晋三君稲垣 実男君
江渡 聡徳君大村 秀章君
佐藤 静雄君桜井 郁三君
鈴木 俊一君田中 和徳君
田村 憲久君戸井田 徹君
能勢 和子君桧田  仁君
堀之内久男君松本  純君
山下 徳夫君吉田六左エ門君
家西  悟君石毛えい子君
城島 正光君土肥 隆一君
松崎 公昭君青山 二三君
旭道山和泰君武山百合子君
藤井 裕久君吉田 幸弘君
児玉 健次君瀬古由起子君
中川 智子君河村たかし君
笹木 竜三君

出席国務大臣
厚 生 大 臣小泉純一郎君

出席政府委員
厚生政務次官原田 義昭君
厚生大臣官房長近藤純五郎君
厚生大臣官房総務審議官田中 泰弘君
厚生省健康政策局長谷  修一君
厚生省保健医療局長小林 秀資君
厚生省生活衛生局長小野 昭雄君
厚生省医薬安全局長中西 明典君
厚生省保険局長高木 俊明君

委員外の出席者
厚生委員会専門員市川  喬君

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委員の異動

五月二十七日
辞任補欠選任
 田中 昭一君 吉田六左エ門君
 戸井田 徹君 田中 和徳君

五月二十七日
辞任補欠選任
 田中 和徳君 戸井田 徹君
 吉田六左エ門君 田中 昭一君

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五月二十五日
 医療・福祉などの充実に関する請願(不破哲三君紹介)(第二八四六号)
 医療保険制度の改悪反対、保険によるよい医療に関する請願(並木正芳君紹介)(第二八四七号)
 同(草川昭三君紹介)(第二九〇三号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二九四一号)
 子供の性的搾取・虐待をなくすための立法措置に関する請願(野田聖子君紹介)(第二九〇一号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二九四〇号)
 国立病院・療養所の廃止・民営化等反対、存続・拡充に関する請願(神崎武法君紹介)(第二 九〇二号)
 公的臍帯血バンクの設立と血液事業法の制定に関する請願(神崎武法君紹介)(第二九〇四号)
 同(草川昭三君紹介)(第二九〇五号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(草川昭三君紹介)(第二九〇六号)
 同(太田誠一君紹介)(第二九四五号)
 同(草川昭三君紹介)(第二九四六号)
 母乳中のダイオキシン類調査に関する請願(神崎武法君紹介)(第二九〇七号)
 同(草川昭三君紹介)(第二九〇八号)
 同(神崎武法君紹介)(第二九四七号)
 同(神崎武法君紹介)(第三〇〇〇号)
 保険によるよい病院マッサージに関する請願(笹木竜三君紹介)(第二九〇九号)
 同(畑英次郎君紹介)(第二九一〇号)
 同(中川智子君紹介)(第二九五一号)
 社会福祉士制度の拡充による保健・医療機関で働くソーシャルワーカーの資格に関する請願(中川智子君紹介)(第二九三九号)
 医療保険改悪反対、社会保障の充実に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二九四二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二九四三号)
 同(平賀高成君紹介)(第二九四四号)
 重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(大野功統君紹介)(第二九四八号)
 同(櫻内義雄君紹介)(第二九四九号)
 同(細田博之君紹介)(第二九五〇号)
 国立療養所西小千谷病院を神経筋高度中核専門病院として整備・拡充に関する請願(田中眞紀子君紹介)(第二九九七号)
 中小自営業者婦人の健康と母性保護、社会的・経済的地位向上に関する請願(辻第一君紹介)(第二九九八号)
 肢体障害者が自立した生活を送るための介護保障の確立に関する請願(中川智子君紹介)(第二九九九号)
同月二十六日
 母乳中のダイオキシン類調査に関する請願(神崎武法君紹介)(第三〇二四号)
 同(市川雄一君紹介)(第三〇九六号)
 重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(中山太郎君紹介)(第三〇二五号)
 同(浜田靖一君紹介)(第三〇二六号)
 同(中馬弘毅君紹介)(第三〇九七号)
 保険によるよい病院マッサージに関する請願(武山百合子君紹介)(第三〇九八号)
 同(土肥隆一君紹介)(第三一四二号)
 同(山本孝史君紹介)(第三一四三号)
 医療保険制度改悪反対、医療の充実に関する請願(金子満広君紹介)(第三一三八号)
 同(古堅実吉君紹介)(第三一三九号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三一四〇号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(綿貫民輔君紹介)(第三一四一号)
同月二十七日
 国民医療の拡充、建設国保組合の育成・強化に関する請願(安住淳君紹介)(第三一八三号)
 同(池田元久君紹介)(第三一八四号)
 同(池端清一君紹介)(第三一八五号)
 同(石井紘基君紹介)(第三一八六号)
 同(岩田順介君紹介)(第三一八七号)
 同(小平忠正君紹介)(第三一八八号)
 同(五島正規君紹介)(箪一二八九号)
 同(小林守君紹介)(第三一九〇号)
 同(仙谷由人君紹介)(第三一九一号)
 同(辻一彦君紹介)(第三一九二号)
 同(中桐伸五君紹介)(第三一九三君)
 同(中沢健次君紹介)(第三一九四号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第三一九五号)
 同(山花貞夫君紹介)(第三一九六号)
 同(坂口力君紹介)(第三三二一号)
 同(辻第一君紹介)(第三三二二号)
 障害者・家族がいつでも安心して利用できる制度の拡充に関する請願(中川智子君紹介)(第三二三七号)
 同(中川智子君紹介)(第三三二六号)
 長時間夜勤・二交代制導入反対、よい看護に関する請願(土肥隆一君紹介)(第三二三八号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三三二七号)
 同(児玉健次君紹介)(第三三二八号)
 同(辻第一君紹介)(第三三二九号)
 同(寺前巖君紹介)(第三三三〇号)
 同(中林よし子君紹介)(第三三三一号)
 同(春名真章君紹介)(第三三三二号)
 同(古堅実吉君紹介)(第三三三三号)
 同(松本善明君紹介)(第三三三四号)
 同(山原健二郎君紹介)(第三三三五号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三三三六号)
 骨系統疾患患者の医療向上に関する請願(坂口力君紹介)(第三二九四号)
 医療保険制度の改悪反対、医療充実に関する請願(石井郁子君紹介)(第三二九五号)
 同(大森猛君紹介)(第三二九六号)
 同(金子満広君紹介)(第三二九七号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三二九八号)
 同(穀田恵二君紹介)(第三二九九号)
 同(児玉健次君紹介)(第三三〇〇号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三〇一号)
 同(佐々木陸海君紹介)(第三三〇二号)
 同(志位和夫君紹介)(第三三〇三号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三三〇四号)
 同(辻第一君紹介)(第三三〇五号)
 同(寺前巖君紹介)(第三三〇六号)
 同(中路雅弘君紹介)(第三三〇七号)
 同(中島武敏君紹介)(第三三〇八号)
 同(中林よし子君紹介)(第三三〇九号)
 同(春名真章君紹介)(第三三一〇号)
 同(東中光雄君紹介)(第三三一一号)
 同(平賀高成君紹介)(第三三一二号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三三一三号)
 同(藤田スミ君紹介)(第三三一四号)
 同(古堅実吉君紹介)(第三三一五号)
 同(不破哲三君紹介)(第三三一六号)
 同(松本善明君紹介)(第三三一七号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第三三一八号)
 同(山原健二郎君紹介)(第三三一九号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三三二〇号)
 すべての国民が安心して暮らせる年金制度の確立に関する請願(古堅実吉君紹介)(第三三二三号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三三二四号)
 国立病院・療養所の院内保育所の改善に関する請願(藤木洋子君紹介)(第三三二五号)
 重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(増田敏男君紹介)(第三三三七号)
 保険によるよい病院マッサージに関する請願(藤井裕久君紹介)(第三三三八号)
 は本委員会に付託された。

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五月二十七日
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案の抜本的見直しに関する陳情書(東京都千代田区霞が関一の一の三小堀樹)(第三三一号)
 国立東佐賀病院の存続と拡充に関する陳情書(佐賀県三養基郡北茂安町大字東尾七三七の五北茂安町議会内中尾義信)(第三五二号)
 ハンセン病療養者の福祉の向上等に関する陳情書(東京都東村山市本町一の二の三細渕一男)(第三五三号)
 在日外国人に係る障害基礎年金、老齢基礎年金等の未受給者に対する救済に関する陳情書(神戸市中央区下山手通五の一〇の一兵庫県議会内山本正治)(第三五四号)
 児童手当制度の拡充に関する陳情書外一件(大阪府池田市城南一の一の一池田市議会内藤川登外一名)(第三五五号)
 辞書等に掲載されている身体障害者等に対する蔑称・不適切語等に対する適正な対応に関する陳情書(福岡県大牟田市有明町二の三大牟田市議会内那須俊春)(第三五六号)
 廃棄物対策の積極的な取り組みに関する陳情書(名古屋市中区三の丸三の一の二愛知県議会内大見志朗)第三五七号)は本委員会に参考送付された。

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本日の会議に付した案件
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案(内閣提出第八四号)(参議院送付)
 検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出第八五号)(参議院送付)

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○長勢委員長代理 松本純君。

○松本(純)委員 自民党の松本純でございます。
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律は、伝染病予防法、性病予防法及び後天性免疫不全症候群の予防に関する法律、いわゆるエイズ予防法という感染症予防に関する三つの法律を廃止し、新しい時代の感染症対策にふさわしい総合的な新法に集約、統合するものであります。
 また、国民生活や公衆衛生水準の向上、国民の健康意識の向上、医学医療の進歩あるいは人権の尊重、行政の透明化等、時代の要請にこたえるとともに、ウイルス性出血熱のような新しい感染症の出現にも対応できる感染症の危機管理体制を構築しようとするものであると理解をしているところであります。
 したがいまして、私は、百年前につくられました伝染病予防法を初め他の二法についても、現行制度の不適当な点は改め、至らざる点あるいは不十分な点を補うことに意を注いできたものであると確信をしているところであります。  このたびの新法には、感染症の発生を未然に防ぎ、拡大を防止するという目的を果たしつつ、患者を単に社会から切り離すのではなく、患者に適切で良質な医療を提供することを通じ、不幸にして感染症に罹患をしてしまった患者さんに万全な手を尽くすことができるよう、この法律を整備しているところでありますが、この万全な手を尽くすということについても、人権と感染予防、両面への配慮が必要であります。
 各委員よりさまざまな御意見を伺っておりますと、新法の成立によって、現行法による対策よりもむしろ後退するのではないかというような御心配や誤解を持たれているのではないかとすら感じられるところがありますが、この新法による対策がいささかも後退しないところか、よりよい対策が講じられることをきちっと説明をし、理解をしてもらう必要があるのではないかと感じております。本日は、法案に関連をいたしまして、幾つかポイントを絞って質問をさせていただきたいと思っております。
 今回の感染症新法の提案によりますと、エイズ予防法は、新法成立とともに、内容的には新法に取り込まれ、エイズ予防法自体は廃止されると伺っております。その理由は、医学医療の進歩や正しい知識の普及等の状況の変化を踏まえたものと説明されているわけでありますが、このようにあっさり廃止するのではなく、エイズ予防法は誤った意図のもとにつくられた法律であるので、反省、謝罪すべきであるとの御意見がこの委員会でも繰り返し述べられたところでもあります。
 それを検証するとして、去る三月二十四日に、予備的調査要請書が衆議院議長に提出され、今般報告書が取りまとめられたところでありますが、果たして、立法当時の厚生省の考え方は非難されるような誤った意図に基づくものであったのかどうか。改めて、立法当時の厚生省の考え方について、保健医療局長の明快な御答弁をいただきたいと存じます。

○小林(秀)政府委員 お答えを申し上げます。
 当時、エイズは有効な治療法がない死亡率の高い病気であり、我が国においても急速な感染の拡大が危惧され、大きな社会問題と認識されるに至ったため、患者等の数が少ない時点で感染予防対策を確立し、国民の不安を鎮静化することが必要であると考えられました。
 このような状況認識に立って、感染源の把握、二次感染の防止、患者等の人権を尊重した最小限の規制の三点を基本に立法を考えたと承知をいたしております。

○松本(純)委員 立法当時の厚生省の考えを伺ったわけでありますが、思い起こせば、当時は欧米で急速に感染拡大が見られていたエイズ、これがついに日本にも上陸して急速な拡大を見るのではないかという危機感が大変多かったように思うところであります。
 法案提出の昭和六十二年の二月ころには、確かにエイズパニックとも言える状況で、新聞も週刊誌もエイズの記事で埋め尽くされていた感があります。その後状況は一応鎮静化をし、今度は、血液製剤により不幸にして感染された血友病患者の方々への補償といった問題がエイズ問題の前面に出てきたところであります。その印象が余りにも強かったので、今や多くの国民にとっては、エイズは何か一部の方々のまことにお気の毒な病気といった認識が多く、関心も薄れつつあるのではないでしょうか。
 そこで、このエイズの現状についてどのように認識をされているのか、保健医療局長の御答弁をいただきたいと思います。

○小林(秀)政府委員 現在、我が国におけるエイズの感染状況は、平成十年四月末までで報告された累積患者数は千七百五十七人、感染者数は四千百十八人であり、我が国では依然として感染拡大の傾向が続いております。
 しかしながら、保健所において実施している匿名かつ無料の抗体検査受診数や相談件数を見ると、近年減少傾向にあることから、御指摘のような関心の低下も懸念されることから、エイズ対策については今後とも適切な対応をとっていく必要があると認識をいたしておるところでございます。

○松本(純)委員 ただいま、エイズの感染拡大は、いまだ我が国では継続をしているとのお話でございます。また、欧米諸外国では、感染の頭打ち傾向や、エイズ死亡数が減少に転じているとの報告もあるようであります。このような状況を勘案した場合、エイズ対策は前進させることこそ必要で、法律を廃止して対策が後退しないか。法律を持っていることは、国としてこの問題は大切ですよという意思表示と理解するのが素朴な考えなのでありますから、単純に考えれば、国の力のかけ方が変わるのかと誤解をされかねないと思うのであります。
 そこで、予防法廃止後の対策はどのように進めていくのか、まずその基本的な姿勢を政務次官にお尋ねをしたいと思います。

○原田(義)政府委員 我が国のエイズは、血液製剤に起因する患者・感染者が多いことが特徴でございまして、平成八年のHIV訴訟和解に基づく恒久対策について、これを誠実に履行していくということが必要だと考えております。
 あわせて、近年、性的接触による患者・感染者が増加しておりまして、この面での対応も極めて重要であるというふうに考えております。  そこで、今後のエイズ対策につきましては、発生の予防、蔓延の防止、医療の提供、研究開発の推進などに関する総合的な対策の推進を図る必要があるため、この新しい法律に基づきまして、エイズに関する特定感染症予防指針を作成することとしており、今後とも、各方面の意見を伺いながら、エイズ対策が万全に行われるよう適切な対策をとってまいりたい、こういうふうに考えております。

○松本(純)委員 ありがとうございました。
 さて、このたびの新法の論議の中核問題の一つが、感染症の拡大予防と感染症にかかった方への医療の提供のあり方であると思いますが、私は、予防と医療がバランスよく進まないと効果的な対策とはなり得ないと理念的には思うのでありますが、具体的にイメージをしてとらえることがなかなか困難であります。
 そこで、エイズについて、新規感染の予防と医療対策についてどのように進めようとしていらっしゃるのか、具体的に説明をいただきますよう、保健医療局長にお尋ねをいたします。

○小林(秀)政府委員 感染の予防策と今先生が御質問いただきましたこの予防には、新規の感染の発生を予防することと、それから蔓延の防止という二つがこの予防の中に入っていると私たちは認識をしております。その予防策と患者・感染者への医療対策が均衡よく進められるべきことは、御指摘のとおり重要なことだと考えておるところでございます。
 具体的には、新規感染症の予防策としては、患者・感染者の発生動向を把握、解析し、啓発活動の重点化につなげることとし、医療対策については、拠点病院やブロック拠点病院の活用を図るなどにより、感染者の早期発見を確実に治療に結びつけるべく努めてまいりたい、このように考えております。

○松本(純)委員 さて、近年の医療、特にエイズ治療薬の進歩は目をみはるものがあるところであります。世界で初めてのエイズ治療薬のAZTが我が国で承認されたのは、エイズ予防法が国会提出後の昭和六十二年九月であり、その後、カリニ肺炎などの合併症への対応の向上とも相まって、治療の光明がわずかながら見え始めたところであります。
 このような流れは、平成八年にカナダのバンクーバーで開催されました国際エイズ会議における多剤併用療法による治療効果の発表によって決定づけられたのであります。現在では、エイズはもはや特別な感染症ではなく、慢性病に近くなったと表現をする専門医の方も多いと聞いております。だからこそ、最新のエイズの研究を進め、エイズ患者・感染者に最新の医療を提供することが非常に重要であると考えますが、厚生省はどのような方策を講じているのか、お尋ねをいたします。
 また、精神面からのケアやサポートが最新の薬物治療と同じぐらい重要であることが指摘をされているところでありますが、このような役目を担うカウンセラーの養成が重要と考えておりますが、厚生省は今後どのような対応をされていくのか、あわせてお伺いをいたします。

○小林(秀)政府委員 厚生省におきましても、最新のエイズの研究を進め、エイズ患者・感染者に最新の医療提供をすることや、患者・感染者の精神的ケアについては非常に重要であると考えておりまして、そのため、施策として、平成六年度を初年度といたしますエイズストップ作戦というのを策定をいたしておりまして、西暦二〇〇〇年までの目標として、一つに、特効薬及びワクチンの開発、このワクチンの開発につきましては、今、ほかの国とも競争をしながら開発を進めておるところでございまして、日本の開発も相当有力であると私どもは今認識をして、科学技術庁にも応援をいただきまして、鋭意進めておるところでございます。二番目に、我が国におけるエイズの流行阻止、それから三つ目に、アジア地域におけるエイズの流行阻止のための支援を掲げ、医療体制の充実や治療薬の開発、国際協力の推進、正しい知識の普及など、総合的、集中的に施策を展開しているところであります。
 具体的には、既に平成九年に、国立国際医療センター内にエイズ治療・研究開発センターを設立いたしました。このもとに、全国八カ所のブロック拠点病院の協力連携体制を立ち上げたところであり、また、患者・感染者に対し心理的ケアを行う体制推進のため、都道府県等におけるカウンセラーの雇い上げによる医療機関への派遣や、拠点病院でのカウンセラー雇い上げに対する経費負担等に対する補助等を実施をしているところでございます。
 新法におきましても、発生の予防、医療の提供、研究開発の推進等に関するエイズに関する特定感染症予防指針を策定し、エイズに対する総合的な対策の推進を図っていくこととしたいと思っております。

    〔長勢委員長代理退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

○松本(純)委員 ありがとうございました。
 次に、少し角度を変えまして、感染症新法の施行と地方自治体の受け入れ体制の問題についてお尋ねをいたします。
 言うまでもなく、感染症対策は、新法の責務規定にもありますように国と地方の密接な連携が極めて重要であり、地方自治体の全面的な協力なしには機能し得ないと考えております。新法の施行時期は来年の四月となっておりますが、さまざまな新しい役割分担が義務づけられることとなる自治体の受け入れ体制が整っているのか、幾つかの点について確認をさせていただきたいと思います。
 まず、感染症指定医療機関の確保の問題でありますが、感染症の予防において、コレラや細菌性赤痢など第二種感染症の指定医療機関は、原則として二次医療圏ごとに一カ所を整備しなければならないと言われておりますが、例えば政令指定都市の横浜などの、複数の二次医療圏を有する場合、この場合には指定医療機関をふやさなければならないということなのかどうか。第二種感染症の指定医療機関の配置基準についてお考えをお伺いをいたします。

○小林(秀)政府委員 まず、感染症患者に対する医療、特に入院医療について、国民の皆さん方も大変イメージを持っていらっしゃるのは、現在市町村に設置をされているところのいわゆる伝染病隔離病舎というイメージを持っていらっしゃって、一般医療と何か切り離したようにお考えになっていらっしゃるのでありますが、我々の考え方は、感染症患者に対する医療というのは今や何も特殊な医療ではない、こう考えておりまして、一般医療の延長線上で行われるものだ、このように思っておるわけであります。
 したがいまして、従来ある伝染病棟を指定をするというような考え方ではなくて、一般医療機関の中で感染症を一生懸命やりましょうというところを指定をするという考え方でありまして、これは、市町村立の病院だとか県立の病院でなくちゃならないとかというような考え方だけではなくて、民間の病院であっても、きちっとした感染症対策をとれる、それから、もちろん専門医がいるとかそういう要件があるわけですが、その要件を満足する医療機関であれば、そのことはそれで県が指定をすればいいということであります。もちろん、要件の中にはある程度、施設の整備要件だとか設備の要件というのは、先ほども言ったように通信、面会の問題だとか、それから、他への感染があってはいけないので、重い者についての措置。特に、県に一つの場合だとそういうことが起きてくるのでありますけれども、基本的には一般医療とそう変わるわけではないということをまずもって御理解をいただきたいと思います。そして、この第二種の感染症指定医療機関は、原則として二次医療圏ごとに一カ所程度確保することを想定をいたしておるところでございます。
 また、感染症の指定医療機関の配置基準、構造基準等については、まだ決めていないわけですけれども、今後できるだけ早く、公衆衛生審議会の御意見を伺いながら具体的に定めることといたしておりまして、それらの基準及び国の定める基本指針に即して各都道府県が定める予防計画に基づき、整備が進められるものと考えているわけであります。
 問題は、広域市町村圏を考えたときに、感染症を預かれるような病院があるのかないのかということですが、私は、国立、公立だけで考えるとそんなふうに思われたり、かえって旧来の隔離病舎というのをイメージされる方が多いかと思いますが、そうではなくて、一般医療機関の中で対応できるということでございます。例えば、国立病院の国立国際医療センターというのが新宿区戸山町にあります。そこにエイズの専門病棟がありますが、ここには、この中で行かれた先生もいらっしゃるかと思いますが、普通から見ると特に何も変わらないような、階が違いますけれども、ある階だけが、階の半分がそうしてあるのですが、患者が入っていかれても、特に何か変わった病院だなというようなイメージではなくて、普通の病院だというふうに考えていただけます。
 なお、御指摘の、横浜市だとか政令都市については、広域市町村圏というもの自体が全国一律であるわけではありませんので、必ずしも厚生省は広域市町村圏に一つなくちゃならぬというふうに決めつけているということではなく、若干の弾力性というか、柔軟に運用ということは考えることができるのではないかと思っております。

○松本(純)委員 今のお答えで、普通のところで、特に隔離をするというイメージではないような状況で手を打っていくということでありますが、そうすればそうするほど、これは来年の四月から法律の施行ということになっていくわけでありますので、当然、感染症の指定医療機関の配置だとか設備の基準というのは早く示していただかないと、時間がないというようなことにもつながってくるわけであります。それだけ、緩やかにさまざまな考え方を受け入れられるということであればあるほど、早くお知らせいただきたいということになるわけでありますが、その辺の、地方と国とのスケジュールの立て方というのでしょうか、その辺についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。

○小林(秀)政府委員 先生の御指摘のとおり、法律、これは国会で通していただきますといよいよ施行ということになる、施行までの日にちがないので大変心配であるという先生の御質問、ごもっともなことだと思っております。
 私どもは、各都道府県が管内の医療機関の開設者等と指定に関する具体的な協議に着手するためには、できるだけ早く感染症指定医療機関の配置基準や設備基準を基本指針等において各地方自治体に提示する必要があると考えております。
 このため、新法の附則の第十三条に、基本指針等を定めようとする場合には、法律の施行日前においても公衆衛生審議会の意見を聞くこと及び関係機関の長との協議が行えるとの規定を定めたところでございまして、法案が成立した後、速やかに基準等の策定作業に入りたいと考えておりまして、各地方自治体に御迷惑をかけないよう最善の努力をしてまいろうと思っております。

○松本(純)委員 ぜひとも速やかなる対応をいただいて、早く情報を流していただき、その準備ができるような体制づくりが地方でもできるようにお願いを申し上げたいと思います。
 次に、患者の移送業務についてお尋ねをいたします。
 現在市町村が行っております患者の移送事務、新法におきましては都道府県の事務ということになりますが、これについても、来年四月までという短期間の間に、都道府県が患者搬送車の確保を行うなど、移送業務の実施主体の移行が円滑に行えないのではないかと心配をしております。どのような方策をとって対処していくおつもりなのか、その考え方をお尋ねをいたします。

○小林(秀)政府委員 新法におきましては、一類感染症や二類感染症の患者等が入院する場合には、病院または診療所に移送を行うときは、従来は市町村でありましたが、都道府県知事の業務として今般位置づけているところでございます。
 患者の移送につきましては基本指針に規定することとしておりまして、各都道府県は、基本指針に即しまして定める予防計画に基づき、地域の実情に即して患者の移送体制の確立を進めることになりますが、その際、関係自治体、指定医療機関等の関係各機関の密接な連携が重要であると考えております。
 したがいまして、患者の移送については、都道府県の搬送車の利用、民間への委託等、種々の形態が想定をされますが、いずれの場合も所要経費に対する国庫負担制度を設けるなど、新法施行時における患者移送体制の万全を期すことにいたしておるところでございます。

○松本(純)委員 この点につきましても、体制が整うよう、あわせてよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 次に、感染症の治療、予防に関して、抗生物質がさまざま使われるわけでありますが、この抗生物質の開発は、医学医療の大きな進歩をもたらしているとともに、感染症対策に大きく貢献をしてきているところであります。しかし、一方で、抗生物質の乱用などによりまして、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、MRSAなどの抗生物質に対する耐性菌の出現が問題となってきております。また、他方で、高齢化の進展や、骨髄移植、腎臓移植など免疫抑制を伴った高度医療を受けている患者、また抗がん剤治療を受けている患者など、免疫力の低下した患者に対して、日和見感染のように、病原力の弱い菌により感染症が引き起こってしまうという例も出現をしているところであります。
 こうした中で、最近、MRSAの中でバンコマイシン低感受性菌が問題となっておりますが、この問題につきまして、厚生省はどのように、何を把握をしていらっしゃるか、まずお答えをいただきたいと思います。

○中西政府委員 従来のMRSAにつきましてはバンコマイシンが効力を発揮する、こういうことであるわけでございますが、今御指摘のバンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌、これはバンコマイシンが効きにくい感染症として注目を集めているということでございまして、今まで、日本では一例、米国では新聞報道を含めまして三例の報告がなされております。ただ、これらの例につきましては、バンコマイシン以外の数種類の抗生物質に対して感受性があったというふうに聞いておるところでございます。
 現在、私どもといたしましては、このバンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌につきまして、バンコマイシン低感受性MRSA等の実態に関する緊急調査研究班、感染症研究所の研究者等を中心として編成した研究班におきまして、およそ三百施設の医療機関の協力を得て調査をやっておる最中でございまして、その結果を踏まえて適切に対応していきたい、かように考えております。

○松本(純)委員 MRSA、すなわちメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対してはバンコマイシンが有効であるとされておりますが、このバンコマイシンが効かないMRSAが出現したとするこの問題でありますが、十分に注意が必要だと思っております。
 さらに、アメリカでは、バンコマイシンが効かない腸球菌、VREが問題となってきていると聞いております。従来、腸球菌は健康人でも腸内に常在しております菌でありまして、病原性を持っていないわけでありますが、免疫が極度に低下している患者に対して時として感染の原因になり、問題となることがあるそうであります。バンコマイシン耐性菌を蔓延させないための対策は検討されているのかどうか、また、厚生省として各医療機関に適切に指導をしているのかどうか、それについてお答えをいただきたいと思います。

○中西政府委員 御指摘のVRE、バンコマイシン耐性腸球菌の問題でございますが、平成八年十二月から、薬剤耐性菌対策に関する専門家会議を開催いたしまして、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌、これは今まだ見つかっておりませんが、こういったものを含む薬剤耐性菌全般についての対策を検討いたしまして、一つは薬剤耐性菌研究を推進する、もう一つは薬剤耐性菌発生動向調査体制を確立していく、こういう結論を得たところでございます。
 この検討結果につきましては、都道府県を通じて医療機関に対して周知徹底いたしますとともに、あわせて、そうした耐性菌を検出した医療機関は報告をするようにというふうに求めてきているところでございます。また、この検討結果に基づきまして、薬剤耐性菌の耐性のメカニズムや発生動向調査等に関する研究班をつくりまして、より適切な情報収集体制の構築等について検討をいただいているところでございます。

○松本(純)委員 感染症に対して用いられる抗生物質等の抗菌薬につきましては、当面する患者の病態に見合った抗菌薬を選択し、適切な用量を正しい使用法で使うことは言うまでもないことでありますが、こうした抗生物質の耐性菌は、抗生物質の不適切な使用によりまして出現をしやすいということが言われております。
 使用基準などに適正に使用されるための対策が何かなされているのかどうか、また、是正をすることがあるとすれば、どのようにするのか、それについてお答えをいただければと思います。

○中西政府委員 御指摘の抗生物質の適正使用というのは、こういう耐性菌をできるだけ抑えていくためには極めて重要な課題であると認識しております。
 平成五年に抗生物質製剤の添付文書の使用上の注意を改定いたしまして、抗生物質の投与に当たっては、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間に投与をとどめるよう注意喚起をしてきているところでございますし、厚生省と日本医師会が協力いたしまして「抗菌薬療法診療のてびき」をつくりまして、これにつきましても広く普及に努めてきているところでございます。
 さらに、日本感染症学会と協力いたしまして院内感染対策講習会を開催してきているところでございますが、この中で、抗生物質の適正使用の啓発普及、これも一つの大きな課題として推進しておるところであります。こういったいろいろな手段を通じて抗生物質の適正使用の推進に努めていきたい、かように考えております。

○小林(秀)政府委員 院内感染防止に関してはMRSAというのが指標になるわけでありますけれども、今回のこの感染症新法におきましては、MRSAは四類の感染症に入っております。したがいまして、これはいわゆるサーベイランス、患者発生動向調査の対象になりまして、MRSAというのは発生頻度が相当あるものですから、定点観測の対象として定点を定め、その定点からMRSAのデータが今度は上がってくることになります。それを公表することによって、MRSAの対策がどの程度進んだのかということ、また逆に言うと、対策が進んでいないためにすごくふえてきたとかということが、今回の新法が通ると、MRSA対策の推進に大いに役立つものと私どもも期待をしている新法であります。

○松本(純)委員 今のお答えは、定点観測ですか。

○小林(秀)政府委員 定点観測ですから、すべての病院ではなくて、どこどこ病院と病院を指定して、その病院から出たMRSAを報告する。そして全国集計をすると、全国でどういう動向になっているのかということの把握ができるようになります。
 そういう指標があることが、実は院内感染対策を進める上で大変役に立つ。そういうのが今回の新感染症法の大きな目的でありますので、少しコマーシャル、PRになりますけれども、その効果として御説明をさせていただきました。

○松本(純)委員 今の調査をするところというのは、全国ではどれぐらいの件数でお考えになっていらっしゃるのですか。

○小林(秀)政府委員 定点観測のポイント数についてはまだ決めておりません。これから専門家の意見も徴して定めたいと考えております。

○松本(純)委員 それから、医師会などとともに手引書をつくっていらっしゃるということですが、この手引書の中身そのものについては、これは医師向けあるいは病院の医療従事者向けにお使いになる手引であるのか、患者さんあてにということなんでしょうか、お尋ねをしたいと思います。

○中西政府委員 医師向けの手引書でございます。

○松本(純)委員 耐性菌等の院内での蔓延を防止するためには、抗生物質の適正使用とともに、それぞれの医療機関の中で働く医療従事者の意識や取り組みが重要であります。また、医療機関として、院内感染防止対策検討会を設置するなど、取り組みが進められていると聞いております。耐性菌等による院内感染への対策としては、医療機関における管理体制が重要であると考えられるわけでありますが、MRSA等院内感染防止対策検討会が適切に機能しなければ困るわけでありますが、それに対して厚生省はどのような指導をしていらっしゃるのか、その内容も含めて御説明をいただきたいと思います。

○中西政府委員 各病院における院内感染対策、これを徹底していただくという趣旨で、それぞれの病院に院内感染対策委員会を設けていただく。その上で、医療従事者を含めて職員の教育を徹底していただく。それから、院内での発生動向をいち早くキャッチするべく調査を行う。それから、先ほど先生から御指摘ございました抗生物質の使用の適正化に努める。そういった院内感染防止対策を着実に取り組んでいただくよう、私どもとして従来から指導してきているところであります。  効果的な院内感染対策を院内でやっていただくためには、医師、薬剤師、看護婦、それから事務部門も当然あると思いますが、院内の各部門、各職種から成る委員会を組織して、具体的かつ総合的な対策を講じていくことが重要でありまして、そうした対策を進め得るよう、先ほども申し上げました院内感染対策講習会、それから都道府県を通じて、趣旨の徹底に努めているところであります。
    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

○松本(純)委員 院内感染対策には、今お話のありました医師、看護婦、薬剤師など、医療機関における医療従事者がチームをつくって、それぞれの専門性を生かして取り組んでいくことが大変重要でありますが、耐性菌等による院内感染対策には院内の抗生物質の使用基準の作成や使用量の把握などが重要であります。病院の薬剤師さんが大きな役割を果たしていくところだと思うのでありますが、どのように受けとめられていらっしゃるか、お尋ねをしたいと思います。

○中西政府委員 病院の薬剤師さんは、当然院内感染対策委員会のメンバーとして参画していただくとともに、その専門性を生かして院内の抗菌薬、抗生物質なり抗菌剤あるいは消事業の使用状況の把握、それから血中濃度モニタリング業務を通じた適正な抗菌薬使用の推進等々、やっていただくべき役割というのは非常に大きいわけでありまして、その専門性の上に立って、ほかの職種と十分連携をとりつつ院内感染対策に貢献していただく、当然そういう役割が期待されているものというふうに認識いたしております。

○松本(純)委員 病院薬剤師の配置基準が今現在見直しが行われていると聞いております。その中で、個々の患者に対する薬剤師調剤業務が業務量の換算の中心になっているとお伺いしておりますが、院内感染対策委員会などでの中央の管理業務についても重要な役割を果たしていくことになるのではないだろうかと考えられるわけでありますが、これらの点についてどのようにお考えになるか、お答えをいただきたいと思います。

○谷(修)政府委員 病院薬剤師の配置基準の見直しにつきましては、この委員会でも何回かお尋ねがございました。現在、医療審議会において引き続き議論をいただいております。
 見直しに当たりましては、今おっしゃるような院内感染に関する委員会、そういうところでの薬剤師の役割というものも考えていかなければいけないというふうに考えておりますが、この見直しについて議論をしております。その具体的な考え方ということについて、幾つかあわせて御説明をさせていただきたいというふうに思います。
 もともとは、これは現在の医療法に基づきます人員配置基準の中で、薬剤師の配置については八十調剤に一人という大分以前に決められたものがそのまま残っているというところに端を発しているわけでございまして、先生が御指摘になりましたように、調剤数によって薬剤師の数を決めるというのは現状に合っていないのじゃないか、そういう基本的な認識でございます。
 そういう意味で、現在検討しております議論の中では、薬剤師が服薬指導等のいわゆる病棟において果たしている役割、それから外来患者に対して調剤等の病院外来において果たしている役割、それをそれぞれ考慮した基準にすべきではないかということが一つでございます。
 それから、具体的な基準の設定に当たっては、現在の病院薬剤師の数、そういう実態と率直に言って余りかけ離れたものにするわけにはいかないだろうということで、実態を踏まえたものというふうにすべきではないかということがもう一点でございます。
 それからもう一つ、先ほど言いました、入院患者、いわゆる病棟における薬剤師の果たすべき役割ということにつきましては、薬剤師さんが実際にやっておられる病棟業務の状況というものをいろいろ分析してみますと、やはりある程度入院患者さんの状況、それを端的にあらわすものとしては、病床の種別というものによって見るべきではないかということで、病床の種別ごとにこれを整理するべきではないかというような議論をいたしております。
 このため、基本的には、療養型病床群とそれ以外の一般病床を分けた方がいいのじゃないかということで、療養型病床群を除く一般病床と療養型病床群、それからそれ以外の、それ以外のといいますか、老人病院あるいは老人病棟、それから当然のことながら精神病床、結核病床、それから今現在この委員会で議論されております伝染病床あるいは感染症病床といったような、それぞれの病床の種別に応じて考えるべきではないかということであります。
 それから一方、外来におきます薬剤師さんの果たす役割ということに関連いたしましては、薬剤師さんの外来における役割、当然調剤ということがあるわけですが、調剤というものを具体的にどういう形でこの基準の中にあらわしていくかということで、具体的には処方せんの枚数といったようなことを考えたらどうかということでございます。
 それで、具体的な数値はまだ出ていないわけでございますが、今までこの問題についての議論をする際の基礎データとしては、厚生省がやりました医療施設調査、それから日本病院薬剤師会が行いました調査、この二つのデータをもとにして検討してまいりました。
 ただ、この二つのデータはいずれも全数調査ではなくて抽出調査でございますので、いろいろ分析をしてみると、比較的大きな病院の状況というものがよく反映はされているけれども、どちらかというと小さな病院、中小の病院の状況が余り反映されていないのじゃないかというような議論が出てまいりまして、それを受けて、五月の初めから、全日本病院協会あるいは医療法人協会あるいは精神病院協会、そういうようなところが中心になりまして、主として中小の病院を対象にした調査を現在行っております。その調査の結果がまとまり次第、その調査と今までのデータも一緒に、あわせて議論をしてこの基準を決めていきたい、このように考えております。
 大分長くなりましたけれども、先生御指摘になりました院内感染についてのいわゆる薬剤師さんの果たす役割、そういうようなものも、当然のことながら、その業務は現在調べている調査の中には数値としてあらわれるというふうな前提で考えているところでございます。

○松本(純)委員 ありがとうございました。
 病院内でそれぞれの医療従事者が力を合わせてこの院内感染症についても対応していく、この努力が大変重要なことと思っております。
 また、この委員会、家西委員のきょうの御質疑の中にもありましたように、人権と感染予防の両立、両輪というような問題についても大変重要な案件を含んでいる大変重大な法案の審議だと私は受けとめさせていただいております。
 そして、将来にわたってどのような新しい感染症が出てくるかもわからない状況で、これが絶対という手はないのでありましょうが、いかなる状況にも素早く対応することができるような前向きな取り組み方をこれからもしていかなければならないところではないかと思うのであります。
 ただいま厚生大臣がお戻りになられました。私の質問につきましてお聞きをいただくことができなかったわけでありますが、大臣には、この感染症新法の成立にかける意気込み、決意といったものにつきましてぜひとも表明をいただき、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

○小泉国務大臣 参議院の特別委員会に出席していたものですから、委員の御意見また質問を聞けなくて大変残念だったのですが、法案に対しまして、百年ぶりの改正なんですね。この新法に反対する方も、それでは旧法と新法とどっちがいいかといえば新法の方が格段にすぐれていると思います。一〇〇%自分の意見が通るというのは大変難しいわけでありますから、比較していただいて、新法の方がはるかによかったらぜひとも賛成していただいて、一日も早くこの法案を成立させていただき、今後また問題点が出てきたら改正をするという姿勢で臨んでいただければ大変ありがたいと思っております。

○松本(純)委員 以上で私の質問を終わります。


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