松本純の会議録 |
1997(平成9)年8月26日 |
第140国会-衆議院厚生委員会-36号
平成九年八月二十六日(火曜日)
午後一時開議
出席委員 | ||||
委員長 | 町村 信孝君 | |||
理事 | 佐藤 剛男君 | 理事 | 津島 雄二君 | |
理事 | 根本 匠君 | 理事 | 岡田 克也君 | |
理事 | 山本 孝史君 | 理事 | 五島 正規君 | |
理事 | 児玉 健次君 | |||
安倍 晋三君 | 伊吹 文明君 | |||
江渡 聡徳君 | 大石 秀政君 | |||
大村 秀章君 | 奥山 茂彦君 | |||
嘉数 知賢君 | 桜井 郁三君 | |||
鈴木 俊一君 | 住 博司君 | |||
能勢 和子君 | 桧田 仁君 | |||
松本 純君 | 青山 二三君 | |||
井上 喜一君 | 大口 善徳君 | |||
坂口 力君 | 福島 豊君 | |||
桝屋 敬悟君 | 矢上 雅義君 | |||
吉田 幸弘君 | 米津 等史君 | |||
家西 悟君 | 石毛えい子君 | |||
枝野 幸男君 | 瀬古由起子君 | |||
中川 智子君 | 鴨下 一郎君 | |||
土屋 品子君 | 土肥 隆一君 |
出席国務大臣 | ||||
厚 生 大 臣 | 小泉純一郎君 |
委員外の出席者 | ||||
厚生政務次官 | 鈴木 俊一君 | |||
厚生大臣官房長 | 近藤純五郎君 | |||
厚生大臣官房総務審議官 | 田中 泰弘君 | |||
厚生省健康政策局長 | 谷 修一君 | |||
厚生省保健医療局長 | 小林 秀資君 | |||
厚生省医薬安全局長 | 中西 明典君 | |||
厚生省老人保健福祉局長 | 羽毛田信吾君 | |||
厚生省児童家庭局長 | 横田 吉男君 | |||
厚生省保険局長 | 高木 俊明君 | |||
厚生委員会調査室長 | 市川 喬君 |
─────────────
委員の異動
八月二十六日 | ||
辞任 | 補欠選任 | |
田村 憲久君 | 大石 秀政君 |
同日 | ||
辞任 | 補欠選任 | |
大石 秀政君 | 田村 憲久君 |
―――――――――――――
六月十八日
一、精神保健福祉士法案(内閣提出第九〇号)
二、厚生関係の基本施策に関する件
三、社会保障制度、医療、公衆衛生、社会福祉
及び人口問題に関する件の閉会中審査を本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
厚生関係の基本施策に関する件〔21世紀の医療保険制度(厚生省案)〕
――――◇―――――
○町村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本純君。
○松本(純)委員 自由民主党の松本純でございます。
ただいま小泉厚生大臣より、八月七日に公表されました「二十一世紀の医療保険制度(厚生省案)」について御説明をいただきました。国民皆保険体制を堅持していくための医療保険の抜本改革について、短期間にここまでおまとめになられ、御検討された厚生大臣の御苦労に対し、敬意を表させていただきたいと存じます。
この案が真に国民に資する、また、将来に向けて長きにわたって機能する制度となってほしいという願いを込めまして、何点か御質問をさせていただきたいと思います。
まず初めに、基本的考え方について小泉大臣にお尋ねをいたします。
本案に対して医療関係団体等からさまざまな御意見があります。今回の案が財政偏重、財政主導となっていることに懸念を示す声も多く伺っております。国民負担の増加を求める一方で、被用者保険の見直しでは政管健保の国庫補助の全廃を提案したり、その一方、医療給付サービスの縮小や混合診療の拡大を想定したと思われる提唱もあるなど、国民の立場から見れば高負担・高福祉ならぬ高負担・低給付となるのではないかというような懸念もあるようであります。
厚生省案の基本的考え方に言われているように、すべての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができるような医療制度を次の世代に引き継いでいくということが大切であると思います。
八月二十五日の新聞報道によれば、厚生大臣はテレビ番組において、医療保険へのこれ以上の税の投入は避けたいとの趣旨の御発言をされたとのことでありますが、やはり公費、保険者、そして国民がバランスある負担を担い合い、それぞれの責任を果たしていくことが必要ではないでしょうか。そして、必要な医療は公的医療保険制度によって給付するといり基本的姿勢を堅持することが国民皆保険体制を守っていくためには不可欠と私は考えますが、小泉大臣の基本的考え方をまずお尋ねをいたします。
○小泉国務大臣 基本的に日本の医療保険制度は、国民の努力によりまして、世界の医療水準に比べて遜色のないかなりすぐれた制度を構築してきたと私は思います。だれでもいつでもどこでも良質な医療サービスを受けられる国民皆保険制席である。この良質な医療サービスをだれでも受けられるという国民皆保険制度を堅持していきたい。
そういう中で今の財政状況等を考えますと、増税はもうしない、赤字国債も発行しない、そういう中で良質な医療サービスをどうやって提供していくかつさらに、国民各自身が医療給付を受ける者とその給付を受ける負担をどうやって均衡していくか、若い世代に対して今後ともこの医療保険制度を引き継いでいくためにどういう改革が必要かという観点からいろいろ総合的な改革案を模索してきたつもりであります。
これからいろいろ御議論いただきますが、我々といたしましては、それぞれの問題につきましてかなり幅のある柔軟な方針を示しております。いろいろな御議論があると思いますけれども、どのような制度を構築するにおきましても、国民の理解を得ていくということが大事でありますので、十分な御議論をいただきまして、将来にわたって、二十一世紀に向かつてこの国民皆保険制度を維持していく上において、高齢者も若い世代もお互いが給付と負担の公平をどうやって図っていきながら良質な医療サービスを受ける体制を構築していくかという点に十分配慮をいただきまして、これからのよりよき案をまとめる上において、皆様方の忌憚のない御意見、御批判をいただきたいと思っております。
○松本(純)委員 それでは、診療報酬体系についてお尋ねをいたします。
現行の診療報酬支払い制度は、甲表、乙表等の点数表の設定や、同時に一点単価を一律十円に改正した内容で昭和三十三年十月から実施され、既に四十年が経過し、今回の改革の大きな柱の一つの診療報酬体系全般の見直しが必要とされているところでありますが、その中の一つとして、医療機関の機能の体系化を促進するための評価、急性疾患、慢性疾患等疾患の特性に応じた診療報酬の評価等が提案されており、特に慢性疾患等については定額制の拡大の方向が示されております。
余り論議されていないように思うのですが、定額制による医療費の節減効果は一体どのようなものになっているのか。現在、定額制については三十一項目について設定されておりますが、これらの定額制の実施による医療費の抑制効果はどのような状況にあるのか、お調べいただいております結果があればお教えをいただきたいと思います。
○高木説明員 現在も一部定額払いの仕組みというものを診療報酬の中で導入しております。これにつきましては、これまで大部分、いわゆる老人保健の関係が多いわけでありますが、そういった意味で、平成二年になりますけれども、入院医療管理承認病院実態調査ということをやっております。この報告の内容を見てみますと、投薬あるいは注射、こういったものの薬剤料あるいはまた検査料というものがそれまでの状況に比べますとかなり合理化がなされておるという報告がなされております。
これからかなりの時間がたっておりますし、また、今回厚生省案でもお示ししましたように、診療報酬のあり方としまして、できるだけ適正な医療費の伸びというものを確保していくというような視点等々に立ちまして、定額払い制等を取り入れることこしておるわけでありますけれども、これらの効果がどういうふうなものになっていくのかという検証が今後必要になってまいります。そういった意味で、本年度におきまして、この定額制の効果こ対する調査研究といりものを行うことにいたしておりまして、現在そのためのチームを編成し、そしてその調査研究の内容等について検討しているところでございまして、そういった意味では、今年度このフォローアップを含めまして調査研究をしてまいりたい、このように考えております。
○松本(純)委員 定額制については、医療機関のコスト意識を高め、また不必要な検査や投薬の抑制等に効果があると言われる一方で、医療の質の低下あるいは重症患者の敬遠等、デメリットを指摘する声も根強いところであります。
厚生省は、定額制に関するこれらの指摘に対してどのように考えていらっしゃるか、またあわせて、定額制による医療の質の低下を防ぐためにはどのような施策が必要とお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
○高木説明員 定額制に伴うデメリットというものがあるのではないかということが言われております。そういった中でよく指摘されますのが、いわゆる粗診粗療になりがちではないかということ、あるいはまた、できるだけ重症患者は扱わない方が有利になるというようなことから、重症患者が敬遠されるんではないかというようなことが挙げられるのでありますけれども、今回診療報酬体系のあり方としてお示ししましたのは、定額制一本やりとかそういうことではありませんで、それぞれの医療機関なりあるいはまたそれぞれの疾患の特性に応じてこの定額制になじむもの、それからまた出来高払いとの組み合わせ、そういった中で最適な診療報酬体系というものをつくっていこう、こう考えているわけでございます。
これまでの出来高払い一本やりといいますか、これがほとんどであった形よりも、私はやはり全体の医療内容の質の向上が期待できるというふうに考えております。
定額払いなりというものは、とかく医療経済面だけで見ますと、その中でできるだけ利益を上げるというようなことになりがちだというふうに言われますけれども、一方、医療行為ということを考えますと、出来高払いで一つ一つ常に積み上げて診療報酬を請求するという形に比べますと、やはり医師の裁量の中でゆとりのある医療というものも確保できるという面がございます。そういった意味では、その適切な組み合わせが確立てきるならば、よりよい質の高い医療というものを提供できると思っております。
ただ、そういった中でも懸念される問題に対する対応ということは、これは当然大事なことでありまして、そういった意味で一番大事なのは、迂遠のようなことかもしれませんけれども、医療内容につきまして患者さんに対する情報の提供なり情報の公開、こういったものがやはり適切に提供される、こういうシステムづくりというものが基本だというふうに思っておりまして、そういった意味で、医療提供体制のあり方の中でも掲げてございますけれども、開かれたそういった医療制度というものをつくっていこうというふうに考えております。
それからまた一方、若干規制的な、基準的なことになりますけれども、看護体制の問題あるいは医療機器等に関する施設基準の設定とか、そういったある程度の基準なりというものを適正に設定することによって粗診粗療と言われるようなデメリット等を回避できるのではないかというふうに考えております。
ただ、最終的にはやはりそれぞれの医師と患者との信頼関係、それからまた医師の倫理観というものに負うところが多いと思いますけれども、全体としては今よりもいい医療のシステムというものは確保できるのではないかというふうに考えております。
○松本(純)委員 さきの健保法の改正の審議におきましても、定額制による医療の質への影響について質問させていただいたところでありますが、そのときには厚生省は十分な資料を持っていないとのことでありました。定額制の拡大に当たってはこの点の十分な検証が必要であると思いますが、いかがでしょうか。
厚生省は、定額制の影響について調査を実施することを計画されたとお聞きしておりますが、どのような調査を実施してしるのか、いつごろ調査結果がまとまるのか、お尋ねをいたします。
○高木説明員 先ほど申し上げましたように、本年度、定額払いの検証に関する調査研究ということを予定しております。現在は、検討委員会、この研究委員会の構成をどうするのか、それからまた具体的な調査項目というものをどうしたらいいのかということについて、専門家の先生方の御意見を伺いながら詰めておる段階でございます。
今私ども念頭にありますのは、調査項目といたしましては、一つ、診療内容に対する影響といった意味で見てみますと、定額払い導入前後の検査の比率、それからまた薬剤の比率、そういったようなものの比較というようなことがございます。これは平成二年度の調査でもございますけれども、そういったものがございます。それからまた、定額払いを採用している医療機関とそうではない医療機関との検査回数なりあるいは投薬量なりのそういった比較というようなものがございます。
それからまた、経営状況という面で見てみますと、これはそれぞれ定額払いというものを導入した場合、そうじゃない場合とにおける費用構造というものがどういうふうに変化してきているのかという問題がございます。それからまた、医業経営全体の収支率といいますか、経営状況というものにどういうふうに寄与してきたのかというようなこと等々でございまして、そういった意味では、診療内容そのものに対する影響、それからまた医業経営といった面に与える影響、こういった両面からそれぞれ具体的な調査項目ということを今詰めている段階でございます。
それで、この調査研究がいつまとまるのかということでございますけれども、私どもとしましては、今年度着手をいたしまして、そしてその結果につきましては来年度中には取りまとめを行いたい、こんなようなめどで検討を行っているわけでございます。
○松本(純)委員 医療機関の医療の質の確保、向上を図っていく上で第三者による病院の機能評価が極めて重要であり、厚生省案でも取り上げています。平成七年度に財団法人医療機能評価機構を設立され、活動を開始されたと伺っておりますが、これまでの活動実績等についてお聞かせいただきたい。
また、厚生省案でも御提案されているように、評価の結果が公表されなければ国民が医療機関を選択する際の情報とはなり得ないし、医療機関の質の向上を図る上でも公開することが重要であると存じます。先日 初めての認定病院が新聞で報道されていましたが、どのような評価結果であったのか、また公表の基準等はどうなっているのか、さらに今後は評価結果は必ず公表されることになるのか、あわせてお伺いをいたします。
○谷説明員 今お話のございました医療機能評価機構につきましては、平成七年に設立をされまして、二年間この評価事業に対する運用調査を行いました。全国百四十三の病院の協力を得まして訪問審査を実施いたしまして、評価手法というものを確立する、またあわせまして、この評価を担当していただく評価調査者の養成事業というものを行いまして、この二年間で二百八十七名の調査者の養成を行いました。
本年四月から実際の事業を開始いたしまして、現在百四の病院につきまして申し込みがあるわけでございますが、このうち十七病院について審査を既に行いました。その審査を行った十七病院のうち、一定の診療機能を満たしているということで、この評価機構の方が判断をいたしました八つの病院につきまして認定証を発行いたしまして、八月の初めにこの八つの病院についての病院名が公表をされたところでございます。
この公表の基準につきましては、今後詰めていかなければならない課題ではございますが、現時点では、認定証を発行した病院名は公表する。ただ、その内容こつきましては、評価病院等のプライバシーにかかわることについては現時点では公表は行わないというようなことになっております。
この評価結果について、基本的にはやはり開かれた医療を目指す、また医療の質を確保していくという観点から、積極的に公表していくということが必要であるというふうに考えておりますが、一方、評価を受けてあるいは認定を受けた、認定証を発行された病院につきましては、病院みずからがその地域に情報提供していくということが必要なんではないかというふうに考えております。
私どもといたしましては、今後、この事業がさらに拡大をしていく、普及定着をしていくということを通じて、できるだけ広く公表をしていくということで機構の方に話をしていきたいと考えております。
○松本(純)委員 医療機関の機能の体系化についてお尋ねをします。
今回の厚生省案では、患者の大病院への集中の是正が課題の一つとされております。そこで、医療機関の機能の体系化の一環として、大病院については入院機能を重視、中小病院、診療所については外来のプライマリーケア機能を重視した診療報酬体系とするとの考え方が提唱されております。
医療機関の機能の体系化については、これまでにも、患者の流れを変え、大病院集中を是正したいとして、平成四年の医療法の改正により、特定機能病院制度を創設し、特定機能病院の他の医療機関への紹介料加算を新設しました。さらに、病院の紹介患者の初診料加算の新設などが実施されてきておりますが、これらの施策により現実に患者の大病院集中の是正にどのような成果が得られているのか、調査結果等ありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
○高木説明員 お尋ねのとおり、平成五年に特定機能病院というような形で診療情報提供料というようなものを新設してきたわけでありますが、これらの影響といいますか、これらに伴う外来の大病院集中というものがどの程度変わってきたかということについては、客観的に評価をしていくというのはこれはなかなか難しい面がございます。
今後、そういった中でも努力していく必要はあると思いますけれども、現時点においては、そういった意味で、客観的な調査データというものはございませんけれども、しかし、この特定機能病院の外来というものを紹介患者に特化させる、そういう方向で、例えば紹介患者については点数上も加算を設ける、あるいはまた特定病院との関係での診療情報提供に伴う加算を設ける、提供料を設ける、こういうような仕組みを導入した、また、それが現在有効に機能しているということで考えてみますと、この特定機能病院のこういった外来の集中というものに対してはある程度、それなりの効果というものが出ているというふうに私どもは評価をいたしております。
○松本(純)委員 次に、償還基準額制についてお尋ねします。
抜本改革の最も大きな柱の一つである薬価基準制度について、薬価基準の廃止、償還基準額制が提案されています。今の薬価基準制度は、昭和二十五年九月の点数表の改正により薬価基準が制定されてからほぼ五十年にわたって実施されてきただけに、薬価基準制度の廃止については懸念する声も大きいと聞いております。
償還基準額制度については、医療機関が購入価格で請求することを本当に担保できるのかという指摘があり、これは制度の根幹にかかわる問題であると思います。この課題の解決いかんによっては、薬価差問題は解消困難ところか、償還基準が第二の薬価基準化し、現行薬価基準制度より悪い事態ともなりかねず、また、患者負担の急増にもつながりかねないとの指摘もあるところであります。
このため、厚生省案においても、患者に対する医師等の説明などを初めとして幾つかの対策を提案されていますが、これらの対策の実現可能性についてどのように考えていらっしゃるのか、お考えを承りたいと存じます。
○高木説明員 新たな、いわゆる償還基準額制度というような方式を導入するに当たりまして、厚生省案の中でもそれに当たっての配慮すべき事項というものを載せておりますが、さらに細部にわたって詰めていかなきゃならない問題はたくさんあると思います。
しかし、基本的な骨格は、厚生省案にございますように、保険医療機関と卸売業者との間の売買契約の透明性というものをきちっと確保する。そういうような手だてとして、いわゆる薬剤の購入伝票とかそういったものの保管あるいは保存というものの義務づけというようなことがございますし、それからまた、実際の請求の内容、いわゆるレセプトにおける請求の内容と購入伝票等の突合といったようなものもこれから指導監査等の際には行っていくというようなことがございます。
それからまた行政サイドにおいても、それぞれこういった売買が適切に行われているかどうかといった意味での卸売業者に対する納入価格等の調査、そういった権限というものを与えていただくというような対応が要るだろうというふうに思います。
ただ、こういった中でいわゆる不正あるいは不当といった状況が発見された場合に、どう厳正に対応するかという問題もございます。これまでも保険医療機関の不正、不当に対してはそれなりの、指定の取り消し等々の措置はございますけれども、今後ともこういった不正あるいは不当というものに対しては厳正に対応していく、そういったものとの関係というものが非常に、実際に実効上担保できる措置としては必要なのではないかというふうに思っております。
それからまた、何よりもこういった新しい制度を導入した際に重要なのは、情報の提供ということでございます。そういった意味では、厚生省案の中にもございますように、積極的に医薬品に関する情報、これは医療機関における購入価格なりあるいはまた償還基準額等、実際の医療機関における購入価格に関する情報、こういったものをきちっと公開をしていく。そして、患者さんに負担を求める場合、患者さんへの説明は当然でありますけれども、さらにその明細書の発行というようなこともきちっとやっていただかなければいけないというふうに考えております。
導入に当たっては、ある程度そういったような措置というものを講じていく中で、今後マーケットがさらに近代化されていく中で、こういったような内容が定着をしていく、そして適正な運用が行われていくというふうに私どもは考えておるわけであります。
そういった意味で、今度の制度というのは、これまでの公定価格を定める薬価基準制度ではございませんから、薬価差というものは発生しない制度でございますけれども、そういった全体の環境づくりといいますか、それと同時に、制度的にも適正な売買が確保できるような手だてというものを法的にも講じていかなければならぬ、このように考えております。
○松本(純)委員 それでは次に、製薬企業の育成という観点から質問させていただきます。
いわゆるゾロ新など、製薬企業の開発姿勢に対する批判もあるようですが、一方、国際的にも通用する開発研究力を持った製薬企業の育成、医薬品の安定的な供給ということも国民医療の上で重要な課題であると思います。新制度によって、急激な薬価低減による今後の医薬品開発に対する影響を懸念する声も強いと聞いておりますが、新制度の採用に当たっては、製薬企業の育成という観点から何らかの施策も必要と考えられます。厚生省のお考えをお尋ねします。
○高木説明員 製薬産業というのは、これからの時代においてかなり成長産業、有望産業であるというふうに目されているわけであります。そういった意味で、この産業の成長の芽を摘んでしまってはいけないわけでありますが、ただ、我が国も製薬産業のマーケットといったものはかなりグローバル化していっておるわけでありますから、そういった意味で、我が国の製薬産業に着目してその育成を図るというような視点ではなくて、やはり我が国における製薬産業のマーケットというものが健全に機能する、こういうような視点から考えるべきだろうというふうに考えております。
ただ、そういった中で、いわゆる医薬品については、研究開発、国際的に通用するような医薬品というものが生まれてくる、これが最大の課題でございます。こういったような芽を摘んでしまう、こういったような方向を阻害する、こういうようなシステムにならないようにしなければいけないというふうに考えております。
そういった意味では、新しい制度を導入するに当たりましては、いわゆる医薬品の研究開発というようなものを阻害しないというようなことから、画期的な新薬、それからまた必要な医薬品というものが市場から消えていかないようにするという意味から、希少疾病用医薬品というようなものに対する配慮というものはやはり必要であろうということでございまして、今申し上げたような観点から、新しい償還基準というものを設ける際には、これらの問題点というものを克服できるような、そういった配慮が必要であり、まだそういうような配慮というものをしていかなきゃならないというように考えております。
○松本(純)委員 時間になりましたので、最後に一つだけお伺いをさせてください。医薬分業についてお尋ねをします。
薬価基準を廃止し、市場メカニズムにゆだね、自由な価格形成を促していくという意味では、今回の案は一つの方向を示されていると思います。
ところで、薬剤選択における薬剤差益のインセンティブを排除するために、やはりその基盤として完全な医薬分業体制の整備が今こそ必要とされているのではないでしょうか。医薬分業は、平成八年度末には、社会保険で二六%を超え、地域によっては四〇%あるいは五〇%を超え始めております。
厚生省案において医薬分業は、「医療費の適正化の推進等」の項でわずか一行のみ触れられておりますが、適正な医薬分業の推進のためにも、厚生省の考え方がもっと明確にされてよいのではないでしょうか。医療提供体制の見直しの観点から、厚生省の今後の医薬分業の推進対策についてお尋ねをいたします。
○中西説明員 医薬分業の推進についてでございますが、御承知のとおり、医薬分業の進展状況につきましては、分業率五〇%のところからわずか数%の県に至るまで、地域的格差が非常に大きゅうございます。したがって、やはりこれは、地域医療体制を考える上で、地域の実情に応じた体制づくりを行っていくということが必要であろうと考えております。
そうした観点に立ちまして、私どもといたしましては、一つは、関係団体あるいは機関の協力のもとに、二次医療圏ごとに地域医療計画の一環として医薬分業計画を策定していただくよう指導いたしておるところでございまして、本年度からそのための予算措置も講じてきておるところでございます。
それからまた、運用上の工夫等の実例を提供するとか、あるいはマニュアル化できるところ、例えば薬歴管理の方法でありますとか在庫管理の方法でありますとか、そういったマニュアルをお示しできるようなところについては、そういったものについても積極的に提供していくことによって医薬分業計画の実施を支援していきたいというふうに考えております。
それからまた、現在国会で御審議いただいております医療法の一部を改正する法律案の中では、この医薬分業に関する事項が新たに医療計画の中の必要的記載事項として位置づけられるという内容を盛り込んでおりまして、そういったものが成立いたしますれば、さらに踏み込んだ形で医薬令業を推進する体制というものができてくるんじゃないか、引き続き努力いたしたいと考えております。
○松本(純)委員 以上で終わります。ありがとうございました。