松本純の会議録 |
1997(平成9)年4月9日 |
第140国会-衆議院厚生委員会-14号
平成九年四月九日(水曜日)
午前十一時一分開議
出席委員 | ||||
委員長 | 町村 信孝君 | |||
理事 | 佐藤 剛男君 | 理事 | 住 博司君 | |
理事 | 津島 雄二君 | 理事 | 岡田 克也君 | |
理事 | 山本 孝史君 | 理事 | 五島 正規君 | |
理事 | 児玉 健次君 | |||
安倍 晋三君 | 伊吹 文明君 | |||
江渡 聡徳君 | 大村 秀章君 | |||
奥山 茂彦君 | 桜井 郁三君 | |||
鈴木 俊一君 | 田村 憲久君 | |||
根本 匠君 | 能勢 和子君 | |||
桧田 仁君 | 松本 純君 | |||
青山 二三君 | 井上 喜一君 | |||
大口 善徳君 | 鴨下 一郎君 | |||
坂口 力君 | 福島 豊君 | |||
桝屋 敬悟君 | 矢上 雅義君 | |||
吉田 幸弘君 | 米津 等史君 | |||
家西 悟君 | 石毛えい子君 | |||
枝野 幸男君 | 瀬古由起子君 | |||
中川 智子君 | 土屋 品子君 |
出席国務大臣 | ||||
厚 生 大 臣 | 小泉純一郎君 |
出席政府委員 | ||||
厚生政務次官 | 鈴木 俊一君 | |||
厚生大臣官房長 | 近藤純五郎君 | |||
厚生大臣官房総務審議官 | 中西 明典君 | |||
厚生省健康政策局長 | 谷 修一君 | |||
厚生省保健医療局長 | 小林 秀資君 | |||
厚生省薬務局長 | 丸山 晴男君 | |||
厚生省老人保健福祉局長 | 羽毛田信吾君 | |||
厚生省保険局長 | 高木 俊明君 |
委員外の出席者 | ||||
防衛庁教育訓練局衛生課長 | 加藤 恒生君 | |||
文部省高等教育局医学 教育課長 | 寺脇 研君 | |||
厚生大臣官房障害保健 福祉部長 | 篠崎 英夫君 | |||
自治省財政局準公営企業室長 | 門山 泰明君 | |||
厚生委員会調査室長 | 市川 喬君 |
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本日の会議に付した案件
健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)
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○町村委員長 松本純君。
○松本(純)委員 まず初めに、薬剤負担の新設について幾つか御質問させていただきます。
初めの質問は、今回の改正によって、新たに薬剤負担が患者負担として課せられることになります。老人の定額、若人の定率の自己負担と合わせるとかなりの患者負担の引き上げとなりますが、政府管掌健康保険等の財源が窮迫しており、ある程度の患者の自己負担の引き上げもやむを得ないところにあると思っております。しかしながら、さらなる軽減策を検討する余地はないのかどうか。
また、定額、定率の自己負担への薬剤負担の上乗せ、いわゆる二重負担でありますが、薬剤一日一種十五円の考え方等は患者にとってわかりにくいとの声もあります。その一方、医療機関の窓口事務も相当のものとなるとの指摘もあり、このような指摘に対してどのように対処されるおつもりなのか、まずお尋ねをいたします。
○高木(俊)政府委員 患者の一部負担の考え方としましては、これは受益と負担の公平というものを図っていく、そのために応分の御負担をいただくということが一つ基本にございます。それからまた、お年寄りと若人の場合、世代間の負担の公平、こういったものに対する配慮ということを今回考えておるわけであります。
今回の一部負担をお願いしておりますもう一つの背景としまして、やはり医療保険財政が非常に窮迫している、そういった中での財政の効果というものについても配慮せざるを得なかったという問題がございます。
そういった中で、新たに薬剤の一部負担をお願いすることにしておるわけでありますけれども、これは、我が国の薬剤のシェアが非常に高い、そういった中の一つに多剤投与という問題がございます。これについての歯どめといいますか、適正化ということを一つ考えておるわけでございまして、そういった意味で、今回新たに、このような形で御負担をお願いしているわけでございます。
若人の場合には、ベースに定率負担がございますので、定率負担と薬剤の定額負担の組み合わせになるというごとから、二重負担ではないかという御指摘があることは承知をいたしております。
ただ、これは、従来の一部負担につきましては、受益と負担の公平という格好でお願いをしておりますし、今回の薬剤に係る一部負担は、それに加えて、別途、薬剤の適正化というものに着目してお願いをしているわけでございまして、そういった意味では、それぞれ、趣旨、目的を異にしてお願いしているということでございます。
それからまた、この負担額につきましては、お年寄りについて薬剤費が一日一種類おおむね百五十円程度ということでございますので、その一割相当額ということで一種類一日十五円ということでお願いをしたわけでございます。
今回の薬剤負担の導入に伴いまして、医療機関の事務も非常に煩雑であるという御指摘がございます。これにつきましては、新しい一部負担というものを導入させていただくということになりますので、これまでに比べますと、医療機関サイドの事務負担が現在に比べるとふえることはどうしても避けられないわけでございますけれども、私どもとしましても、医療機関もさることながら、患者さんにとっても、できるだけそういう事務的な御負担というものが軽減されるように、いろいろな面での工夫をしていかなければならないというふうに考えております。
○松本(純)委員 一日一種十五円案の場合、二百五円以下については一種類とみなすとされておりますが、十五円という半端な単価や、二百五円以下は何種類あっても一種類とみなすことの意味について、医療現場で国民に説明することは、今御説明はいただきながらも、大変困難なことだと思っております。
また、二百五円以下は何種類あっても一種類とみなすという考え方に従って患者負担の計算をすることは、医療機関、薬局にとって大変な事務量となることが予想されております。特に二百五円の中では、コンピューターでの計算をしていくにも、その組み合わせをどうするかというようなことによって、そのシステムそのものも立ち上げがしにくいというようなこともお伺いをしているところであります。
そこで、多剤投与の抑制という意味はよく理解できるわけでありますが、一日一種類という考え方を尊重するとして、例えば一日一種類十五円を十円に引き下げることはできないでしょうか。そして、そのかわりに、この二百五円以下を一種類とみなすルールをやめる。
こんなことをすることによりまして、一つには、一処方当たりの種類数は平均四ないし五種類と言われておりまして、一日当たりの患者負担は五十円程度に軽減ができます。二つ目として、一日五十円という考え方も一部にありますが、これだと五十円以下の薬剤の場合、患者負担を取り過ぎになるということもありますが、一種類十円ということで取り過ぎを避けるということもできます。三つ目に、十円という丸い数字で、国民にも説明しやすい、また、計算しやすいということにもなります。四つ目として、二百五円を廃止することで、国民に説明がしやすい、そんな状況をつくることができます。さらに五つ目として、二百五円がなくなることで、医療機関、薬局の窓口での患者負担の計算事務も大幅に軽減できる等々。
一部では二百五円がまた不正請求の温床とも言われていると仄聞をしているところであり、これはぜひ検討すべきことと思っておりますが、どのように考えられるか、お尋ねをします。
○高木(俊)政府委員 何点かございますが、まず一つには、今の十五円という金額よりも十円という方がわかりやすいではないかというお尋ねでございます。
確かに、十五円より十円の方がわかりやすいという面がございますけれども、問題は、今回の健康保険法等医療保険の改正をお願いするに当たりまして一部負担の金額等を設定した考え方、これは、先ほど申し上げましたように、お年寄りの一種類一日の平均的な薬代が百五十円程度である、それのおおむね一割程度ということで計算をさせていただいております。と同時に、財政が非常に窮迫しております制度におきまして、この財政的な効果というものも、これも無視できないという問題がございます。そういった意味で、これをさらに十円に軽減していくということは、財政的な意味での問題というものを生じることになりますので、これはなかなか難しいというふうに考えざるを得ないと思います。
それからもう一点は、一日分の薬価の合計額が二百五円以下の場合については種類数にかかわらず一種類として計算をする、この取り扱いでございます。
これにつきましては、現在の診療報酬におきましても、このような調剤の数え方をしております。合計数が二百五円以下の場合については、これは一種類というふうな請求上の取り扱いをさせていただいておりまして、それとの関係で、今回の種類の数え方につきましてもこれに合わせた形にさせていただいたわけであります。
これを廃止して、二百五円以下の場合でもそれぞれの種類に応じて一部負担をお願いするという考え方もそれはあり得るのでありますけれども、我々としては、現行の制度の仕組みに乗っかった形での方法の方が関係者も理解しやすいのではないかというふうな配慮等がございまして、このような形にさせていただいておるわけでございます。
今回、新たに御負担をお願いする制度を設けるわけでありますから、そういった意味では、なかなかわかりにくいということがあろうかと思いますけれども、私どもとしては、今回の改正の趣旨を十分御説明を申し上げ、御理解を賜りたいというふうに思っておりますし、また、医療機関等の事務的な負担というものもできるだけ軽減するように工夫をしてまいりたい、このように考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
○松本(純)委員 ただいまの二百五円についても、これは、金額、一種類にするということだけではなくて、薬品名の記載省略というようなところも問題点になるところであり、例えば、処方せんがその薬剤の流通を一部証明するという能力がそこにあると見るのであれば、そこに薬品名が省略されずに一品一品がきちんと記載される、そしてその単価がきちんと計算されるということによって、全体の薬剤費の抑えということには大きな効果があると私は考えておるところでありまして、どうぞ今後も検討していただきたいと要望をさせていただきたいと思います。
次に、今後の医療保険改革についてお尋ねをいたします。
医療費の約三〇%を占める薬剤費の節減合理化は、今後の医療保険改革の大きな目標の一つであります。今回の健保法の改正においても薬剤負担の引き上げが提案されておりますが、患者負担の引き上げはあくまで当面の施策であり、抜本的な薬剤費対策が必要であることは論をまたないところであります。
薬剤給付のあり方については、フランスの償還制、ドイツの参照価格制など幾つかの案が挙げられていますが、これまでの薬剤費適正化の議論は、次の点で議論が上滑りしていると思えてなりません。
第一に、償還制にしても参照価格制にしても、外国で実施されているというだけで、どのような制度なのか、ほとんど詳細がわからないままに、同床異夢の状態で議論がなされている状況であります。
したがって、これらの制度はどのようなメリット・デメリットがあるのか、我が国の国民性や医療慣行になじむものなのか、ほとんど議論されないままに、とにかく今の薬価基準制度が悪い、これらの制度ならすべてが解決されるかのごとく主張する向きもあります。
第二に、薬剤費適正化の議論が余りに財政的な視点からの議論に偏り過ぎているのではないでしょうか。
薬剤について考えるとき、まず考慮すべきは、薬剤の有効かつ安全な使用の確保、そして薬剤の効率的な使用の推進の二つの点です。その結果として、薬剤の使用が合理化され、薬剤費の節減につながる施策こそ模索すべきことと思います。そうでなければ、ただいたずらに薬剤費を抑制し、必要な医薬品も使用せず、結果的に病気をこじらせ、余計な医療費の出費となることにもなりかねません。医薬品についての今日の課題は、薬剤費の適正化とともに、薬剤使用の適正化であるはずであります。
そこで、質問いたしますが、医療保険審議会は、平成八年六月二十一日に、「今後の国民医療と医療保険制度改革のあり方について」と題する第二次報告を出していますが、いわゆる償還制等についてもその中に上がっております。医療保険審議会には、平成七年度、薬価基準問題や薬剤給付のあり方について審議するために医薬品専門部会が設けられたと伺っておりますが、償還制、参照価格制についてどのような審議がなされたのか、その内容について御説明をお願いいたします。
〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕
○高木(俊)政府委員 医薬品については、先生御指摘のとおり、まさに使用の適正化ということが基本でありますし、それに当たっては、有効性あるいは安全性ということが基本になる、これは申すまでもないというふうに私ども考えております。
そこで、医療保険審議会の医薬品専門部会についてのお尋ねでございますけれども、平成六年の十一月から平成八年の十一月にかけまして、この専門部会において、医薬品に係ります保険給付のあり方について専門的な視点から検討が行われております。そういった中で、参照価格制度それからまた償還制度について具体的に検討がなされております。
その際の、まず参照価格制度ということについての意味合いでありますけれども、資料に基づいて申し上げますと、医療機関等に保険償還する価格の上限を設定する、その上限額を超える部分は全額患者負担とする、こういったふうな考え方を基本にして御議論がなされております。
それからまた、償還制度の意義づけとしましては、薬剤費について患者が一たん医療機関等に全額を払う、そして保険者が患者の請求に応じて償還する、こういうふうな考え方をベースとして御議論がなされております。
それぞれ、やはりメリット・デメリットというものがあるということで議論がなされております。
参照価格制度についてでありますけれども、当時の議論の概要を申し上げますと、一つには、同種あるいは同一の効能がある薬につきまして、廉価な薬、安い薬を使用することによって、医療費の節約が可能であるというふうなことが一つ挙げられております。ただし、実際には、後発品に対するイメージや信用をいかに確保するかが課題であるというふうな御議論がございます。一方、ドイツの例におきましても、ドイツの場合には参照価格制度を導入しておりますけれども、参照価格を設定しない品目がございます。そういった品目へのシフトが生じ、薬剤費の節減効果というものも短期間にとどまっているのではないか、また、参照価格制度等の導入によりましてメーカーの改良型の新薬開発志向が高まっている、こういうふうなことが御議論されております。
それからまた、償還制度につきましては、患者のコスト意識を向上させるためには償還制度の導入というものも一つの方策であるという御意見がございますし、一方、償還制度というのは、実際上は、所得の低い、いわゆる貧しい層の方々の受診抑制につながるおそれがあるのではないか、また、医薬品の適正使用という観点からは有効とは考えられないのではないかというふうなことで、それぞれメリット・デメリットにつきまして御議論をいただいておるわけでございます。
○松本(純)委員 償還制、参照価格制については十分な議論がなされているというところにはまだ至っていないと思うわけでありまして、言葉だけがひとり歩きしているのではないかなというようなことで心配をしているところであります。
そこで、保険局長にお尋ねをしたいのでありますが、医療保険審議会に提出した資料の中で、厚生省は償還制、参照価格制について挙げている以上、これらの制度についての厚生省としてのある程度の構想があると思いますが、それがどのようなものか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
○高木(俊)政府委員 現在の薬価基準制度そのものの抜本的な見直し、これはまさに同時並行的に、あるいは今後精力的に取り組んでいかなければならないわけでございます。
そういった中で、我々は、今いろいろな角度から検討しておりますけれども、やはり基本につきましては、現在の公定価格制度というものを改めていく必要があるのではないか、薬の値段については市場の実勢にゆだねて、そして、それを基本として保険でカバーしていく範囲あるいは基準というものを考えていくことが適当なのではないか、こういうふうな視点を一つ持ちまして検討いたしております。なおいろいろな考え方があろうと思います。私どもとしましても、今後さらに具体的に詰めていかなければならない、このように考えております。
○松本(純)委員 厚生省の構想では、償還制となった場合、償還額の算定根拠はどこに求めるのか、また、薬剤ごとの償還率はどのようにして定めるのか、お考えがあればお教えをいただきたいと思います。
○高木(俊)政府委員 厚生省として、償還制を採用するということを決めたわけでございません。
ちなみに、外国の例で御説明をさせていただきたいと思いますが、償還制を導入しておりますのがフランスでございます。フランスの場合には、償還率あるいは償還額、この設定は二段階で構成をいたしておるわけであります。
まず一つには、医師会、薬剤師会、疾病保険金庫、医薬品製造団体の推薦者、医薬品分野における学識経験者、関係省庁の行政官等から構成されます情報公開委員会というものを設けております。ここで、既存の類似薬との治療上の利点を比較したり、医療経済評価等につきまして評価するという格好が一つの段階であります。
それから、その次のステップといたしまして、経済委員会というものを設けております。この構成メンバーは、経済・財務、社会保障、保健、産業、こういった各省を代表する委員で構成されておりまして、この経済委員会におきまして、情報公開委員会の中の評価を踏まえ、企業の設備投資状況とか輸出販売の可能性、そういったものを総合的に考慮して償還額を決定しているというふうになっております。
また、フランスにおける個別の医薬品の償還率でございますけれども、まず一つは、治療に不可欠で特に高価な医薬品については一〇〇%償還するということでございます。また、一般薬剤については六五%を償還するということでございます。それからまた、軽症の疾患の治療に用いる薬剤については三五%を償還する。さらには、ビタミン剤等は給付の必要性に乏しいというような考え方に立っておるようでございまして、こういった薬剤については償還率ゼロということでいわゆる保険の給付外、こんなふうな基準を設定して実際に行われております。
○松本(純)委員 償還制や参照価格制とする場合、薬価差益を解消するために、薬価基準を廃止し自由価格制にしたらどうかという御意見があります。自由価格制とは、医療機関が仕入れ価格に自由にマージンを乗せて売ってよい、すなわち、医療機関に医薬品の販売を認めることと同義になります。
自由価格制にしたら、医療機関の薬剤収益への依存は改善すると思われますか。あるいは、医療機関の薬剤収益依存がむしろさらに大きなものになるのではないかとの心配もありますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
○高木(俊)政府委員 現在の薬価基準制度の一番大きな問題としては、公定価格であるということ、そういった中で、医薬品の供給についてはむしろ過当競争ぎみであるという問題があろうと思います。そういった中で、適正な医薬品の価格というものをどういうふうな格好で形成していっていただくのが一番いいのかということになりますと、私どもとしては、やはり市場の流通の実勢にゆだねるというのを基本にすべきであろうというふうに考えておるわけであります。
確かに、そういった自由価格制といった場合には、先生御指摘のような問題点を懸念する向きもございます。しかし、現在の公定価格制のもとにおける薬価差の問題等々に伴う弊害、こういったものの是正ということを考えますと、現行の薬価基準制度ではやはり難しいのではないかというふうに考えざるを得ないわけであります。
先生御指摘のような問題等々をも踏まえながら、適正な薬価、薬の値段というものをどういうふうな格好で形成していくのがいいのかということについて、外国の状況等も十分踏まえながら、我が国の実態に合った適正な方式というものを考えていくということではないかというふうに考えております。
○松本(純)委員 現在、ヨーロッパで、我が国のように薬価基準制度を持つ国はどこなのか、また、自由価格制で非分業の国はあるのか、確認をさせてください。
○高木(俊)政府委員 いわゆる薬価基準制度、我が国と全く同じ薬価基準制度ということでありませんけれども、保険で償還する基準というものを公定しているという意味では、フランスが医薬品の価格を公定している国ということで一般的には挙げられているわけであります。
フランス以外の主な欧米諸国を見ますと、医薬品の価格につきましては、これは公定しませんで、いわゆる自由価格制を採用いたしております。そして、これら自由価格制を採用している国につきましては、いずれの国におきましても完全な医薬分業という形をとっております。
○松本(純)委員 自由価格制とし、なおかつ医療機関の薬価依存からの脱却を図るというのであれば、まさに、物と技術を分離する医薬分業しかないのではないかと思うわけであります。その意味で、与党協議会の基本方針でも医薬分業の推進をすべきとしておりますが、厚生省としてはどのように受けとめておられるのか、お尋ねをいたします。
○高木(俊)政府委員 厚生省としましては、これまでも、医薬分業というものを推進していくべきであるということで力を入れておるわけでございます。
これは単に保険財政だけの問題ではありませんで、薬剤の重複投与、飲み合わせ等に伴う副作用の問題、こういった問題に対する防止というような効果、それから、そもそも医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮して良質で適正な薬物治療を行う、そういうような視点で、かかりつけ薬局を中心とした医薬分業というものを推進していくことが望ましいということで考えておりまして、そういった考え方については今後とも推進していく必要があるというふうに考えております。
○松本(純)委員 医薬分業とは、薬物医療の公開であるとも言えます。医師は、処方せんによって処方薬を公開することになるので、処方には慎重になります。一方、患者の側も処方薬を知らされることにより、例えば薬剤の重複使用を避けることも可能となります。また、患者が複数受診した場合、かかりつけ薬局を持つことで、重複投薬のチェックや相互作用のチェックが可能となり、薬剤使用のむだの排除や薬剤使用の適正化が期待できるのです。
また、医薬分業では、医師は、一種類しか処方しなくても十種類処方しても処方せん料は一定でありますから、必要最小限の処方に取り組む環境ができ上がります。したがって、医薬分業では薬剤使用の節減が期待できるのであります。現に、厚生省が平成三年に実施した非分業と分業した場合の医療費を比較した調査でも、長野県の上田市、東京都大田区蒲田のような面分業の地域では明らかに薬剤費が節減されております。要は、面分業で適正な医薬分業を推進することが重要であります。
そこで、今回、与党協議会の医療制度改革の基本方針において、医薬分業の推進が取り上げられたところでありますが、これまで歴代の厚生大臣が、国会の答弁において、医薬分業を推進する旨を御答弁されてきました。しかし、厚生省内の医薬分業への取り組みを見ると、業務局がこれを所管し、主として受け入れ体制の整備という形の施策に限られ、医療政策としての医薬分業に対する基本姿勢が全く見えないと言っても過言ではないと思います。
今国会に上程されている医療法改正案において、ようやく医薬分業が医療計画の必要記載事項とされ、医療行政の中に初めて医薬分業が取り上げられることとなりました。今後、医療行政は医薬分業にどのように取り組んでいかれるつもりか、健康政策局長にお聞きをしたいと思います。また、特に医療計画への医薬分業の記載についてはどのような内容を想定されているのか、いま一度お尋ねをいたします。
○谷(修)政府委員 医薬分業の推進ということにつきましては、厚生省全体としての姿勢は、先ほど保険局長からお答えがあったとおりだと認識をしております。
今先生お話のございました、医薬分業についての医療法の一部を改正する法律案の中での位置づけでございますが、この改正案の中では、地域医療の体系的な整備を図るということから、地域医療計画の機能の見直し、充実ということを考えております。具体的には、二次医療圏ごとに病院、診療所、薬局その他の医療施設の整備目標というものを必ず記載するということにいたしております。医薬分業ということにつきましては、今申し上げました病院、診療所と薬局との機能の分担あるいは業務の連携ということの中で位置づけられるというふうに考えております。
医療計画に記載する部分になります医薬分業の具体的な内容、これは基本的には医療計画を作成いたします都道府県において決められることでございますけれども、改正医療法施行の際、医療計画の作成指針として厚生省の考え方を示したいというふうに考えております。
指針の内容といたしましては、これから詰める、検討するわけでございますけれども、例えば、かかりつけ薬局の整備ですとか、医薬分業を推進するに当たりまして必要でございます処方せん応需体制の整備といったようなことについて指針の中に盛り込むということになるのではないかというふうに思います。具体的なことは、今後具体的に検討していくというふうに考えております。
○松本(純)委員 医療保険の診療報酬の中で、包括点数制の採用が進んでおります。包括制は、医療機関にコスト意識を持たせ、過剰な診療や投薬を抑制するという点で効果を上げているとされていますが、どのような効果を示す資料があるのか、お示しいただきたいと思います。
○高木(俊)政府委員 若干古い資料で恐縮でございますけれども、平成二年度に実施いたしました調査がございます。これは、老人の入院医療管理承認病院実態調査ということでやったものでございます。
この結果によりますと、老人医療におきますいわゆる包括払い、これを採用いたしました医療機関における調査でございますけれども、日常生活動作能力を損なうことなく、検査、投薬、注射、これらの件数及び点数の減少が認められた、こういった調査報告がございます。
○松本(純)委員 私の手元にも厚生省からいただいた資料がありますが、実は平成二年度の調査という大変古い資料で驚いているところであります。最近のものはないのか、改めて確認をさせていただきます。
いずれにいたしましても、単に医療機関のコストに対する薬剤比率が下がったというだけで薬剤使用の適正化が進んだと言えるのかどうか。言えるとしたら、どのような評価からそう言えるのか、教えていただきたい。
また、大変古い資料とおっしゃいました厚生省の資料によれば、入院医療管理承認病院実態調査の結果では投薬が三四%減ったとしておりますが、これはそれだけむだな投薬が行われていたということにつながってしまうのかどうか、あわせてお尋ねをいたします。
○高木(俊)政府委員 平成二年度に実施しましたこの調査は、老人医療の老人病棟入院医療管理料というものを新たに導入しよう、そういった際にその効果を調査したものでございます。
今回、実はこれらについては継続的な調査がございませんので、これまで実施してまいりました包括制導入に伴う効果、こういったものの検証をきちっとする必要があるだろうということで、平成九年度に新しく予算がつきまして、そして、新たな包括点数のあり方というものを検討する際の基礎資料にしたいということで、平成九年度に調査研究を実施いたしたい、こういうふうに考えております。
この平成二年の調査において、今先生御指摘のような形で医療機関の薬剤比率が減少した、これをどういうふうに見るかということでありますけれども、大方の見方といたしまして、当時、これらの結果については、薬剤の使用量の減少あるいは比較的薬価の低い薬剤の使用への切りかえによって、医療機関みずから、経営努力といいますか、経営に資するようなビヘービアというものがとられたのではないかというふうに言われておるわけであります。
○松本(純)委員 例えば、老人保健施設は定額制で薬剤比率が低いと言われていますが、入所する前に病院から医薬品が患者に交付されており、その薬を持って老人保健施設に入っているから薬が少なく済んでいるのだというように言われている例も聞いております。その費用は、結局は健康保険で請求されていることになってしまうわけであります。
また、介護保険制度の審議におきまして、私は、療養型病床群の例を挙げて、包括点数制が医療内容の質の低下をもたらすのではないかとの疑問を呈したところでありますが、与党協議会の基本方針でも、定額制による粗診粗療対策に配慮すべきであるとしております。厚生省はこれまでにどのような対策を講じてきたのか、お伺いをします。
さらに、米国では疾病ごとのDRGを策定した上で包括制としていると聞いております。包括制下の医療機関の機能を十分評価する体制ができていない状況で包括制を進めようとすることは問題があるのではないかとも思っているところでありますが、所感をお尋ねいたします。
○高木(俊)政府委員 これまで、包括制を導入するに当たりまして、医療内容の質が低下すること、これを最も懸念しなければならないということでやってまいりました。
そういった際の一つの問題として、包括化したときの包括点数といいますか、これが、従来出来高払いで行われていた場合の点数との間で余りにもバランスを失しているということになると、従来に比べて粗診粗療というようなことに結びつきやすいという問題があろうかと思います。
それからまた、これを導入するに当たっては、例えば必要な看護体制あるいは医療機器、こういった周辺の施設基準といったものもきちんと備えているかどうか、そういったような配慮というものも必要だということで、それらの点について十分配慮しながらこの包括制というものを導入してきたというふうに考えておるわけであります。
そうは申しましても、医療の質を低下させない、低下しないようにする歯どめの最大のものは、医療内容につきまして、患者に対する情報の提供、情報の公開ということが最も大切だろうというふうに思っております。これから、これは包括制だけではありませんけれども、医療につきましての情報の提供、情報の公開、こういったものについて積極的に努力をしていく必要があるというふうに考えております。
〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕
○松本(純)委員 質問がまだ幾つか残っているのでありますが、時間の関係もありまして、薬剤師教育の六年制について最後にお尋ねをさせていただきたいと思います。
ことしの一月十三日の読売新聞に興味のある記事が紹介されています。アメリカのギャラップという世論調査機関のアンケート調査で、アメリカの主な職業二十六種類について最も尊敬されている職業は何かという調査をしたところ、薬剤師がトップだったというものであります。
一方、欧米で広く読まれています「スクリプト」という製薬産業界紙で、この五年ないし十年以内に、イギリスでは薬剤師に処方権を認めていくことになるであろうという記事が掲載されております。なお、アメリカでは既に十六州で、薬剤師に条件つきながら処方権を認めているという情報もあります。
このようなことがなぜ欧米では起こり得るのか。医薬品の使用ということを国家がきちんと考え、薬剤師という医薬品専門職能を大事に考えているからではないでしょうか。したがって、欧米はもちろん日本以外のほとんどの国が、薬剤師の教育年限は五年ないし六年となっております。アメリカでは八年という州もあります。翻って我が国では、薬剤師は四年の教育のままとなっております。
さきに厚生省は、薬剤師養成問題検討委員会が薬剤師教育について報告を出し、今世紀末までには薬剤師教育六年を実現すべきと報告しました。ところが、文部省の薬学教育の改善に関する調査協力者会議は、現行四年の学部カリキュラムの改善を進めるという報告をまとめ、学部改善の方向として、東大薬学部の古賀薬学部長を座長として学部カリキュラムの改善案をまとめられました。各薬科大学は、今、この文部省の協力者会議の方針に従って実習の強化等改善に努力しているとのことであります。
しかし、文部省の協力者会議がまとめたこのいわゆる古賀レポートについて、現場の薬学教育関係者は、とても四年でできるものではないと言っています。薬学者として必要な基礎薬学を修め、その上に医療薬学を修めるとしたら、薬剤師教育六年制がどうしても必要というのが関係者の本音であると聞いております。
薬剤師教育六年制をできるだけ早い時期に実現するよう、新しい時代を迎える変革のとき、今こそ作業を開始すべきときではないかと思っておるところでありますが、厚生大臣並びに文部省医学教育課長の見解をお伺いさせていただきます。
○寺脇説明員 文部省といたしましては、薬剤師の資質向上を図りますために薬学教育の改善を進めますことは、極めて重要なことであると認識をいたしております。
このために、薬学系の大学院の拡充整備ということで量的にも質的にも積極的な整備を進めておるわけでございまして、平成九年度にも国立で三つの大学の大学院の整備を行ったところでございます。また、先ほどございましたようなレポートの結果等を見まして、学部段階での抜本的なカリキュラム改革、中でも実習の重視というような考え方でカリキュラム改革を促進しておるところでございます。また、病院等での実務実習の充実方策でございますとか、学校を出た後の生涯研修の充実方策等につきましても、現在、厚生省や薬剤師会等関係団体との間で協議の場を設けまして、総体的にどうあるべきかというような検討をあわせ進めておるところでございます。
そういった総合的な検討の中から、大学における学部教育の内容及び年限というような問題も今後議論が深まっていくというふうに考えておりまして、引き続きまして、厚生省及び関係団体との密接な連携のもとに、あるべき薬学教育の姿につきまして、研究、改善をさせていただきたいと存じます。
○丸山政府委員 薬剤師の方の資質向上ということで、薬剤師教育六年制というのは大変重要な問題でございます。
当面、大学四年制に大学院二年制を加味いたしまして、その中に六カ月以上の実務実習を加えるという構想で、その具体化について文部省を初め関係者と協議を進めてまいっております。
現在、大学院の拡充あるいは医療現場での実務研修の受け入れ体制の整備ということにつきまして、原住省といたしましても、特にこの四月、本尊度からは、免許取得後の一年間の実務研修事業も始まっております。引き続きまして、関係者との合意形成を図りながら、この問題の推進を図ってまいりたいと考えております。
○松本(純)委員 以上で終了いたします。ありがとうございました。