松本純の会議録 |
1997(平成9)年3月21日 |
第140国会-衆議院厚生委員会-7号
平成九年三月二十一日(金曜日)
午前十時一分開議
出席委員 | ||||
委員長 | 町村 信孝君 | |||
理事 | 佐藤 剛男君 | 理事 | 住 博司君 | |
理事 | 津島 雄二君 | 理事 | 長勢 甚遠君 | |
理事 | 岡田 克也君 | 理事 | 山本 孝史君 | |
理事 | 五島 正規君 | 理事 | 児玉 健次君 | |
安倍 晋三君 | 伊吹 文明君 | |||
江渡 聡徳君 | 大村 秀章君 | |||
奥山 茂彦君 | 嘉数 知賢君 | |||
桜井 郁三君 | 鈴木 俊一君 | |||
田村 憲久君 | 根本 匠君 | |||
能勢 和子君 | 桧田 仁君 | |||
松本 純君 | 山下 徳夫君 | |||
青山 二三君 | 井上 喜一君 | |||
大口 善徳君 | 鴨下 一郎君 | |||
坂口 力君 | 福島 豊君 | |||
桝屋 敬悟君 | 矢上 雅義君 | |||
吉田 幸弘君 | 米津 等史君 | |||
家西 悟君 | 石毛えい子君 | |||
枝野 幸男君 | 中桐 伸五君 | |||
瀬古由起子君 | 中川 智子君 | |||
土屋 品子君 | 土肥 隆一君 |
出席国務大臣 | ||||
厚 生 大 臣 | 小泉純一郎君 |
出席政府委員 | ||||
厚生政務次官 | 鈴木 俊一君 | |||
厚生大臣官房長 | 近藤純五郎君 | |||
厚生大臣官房総務審議官 | 中西 明典君 | |||
厚生大臣官房審議官 | 江利川 毅君 | |||
厚生省健康政策局長 | 谷 修一君 | |||
厚生省薬務局長 | 丸山 晴男君 | |||
厚生省老人保健福祉局長 | 羽毛田信吾君 | |||
厚生省保険局長 | 高木 俊明君 | |||
厚生省年金局長 | 矢野 朝水君 |
委員外の出席者 | ||||
厚生大臣官房障害保健 福祉部長 | 篠崎 英夫君 | |||
厚生委員会調査室長 | 市川 喬君 |
─────────────
委員の異動
三月二十一日 | ||
辞任 | 補欠選任 | |
家西 悟君 | 中桐 伸五君 |
同日 | ||
辞任 | 補欠選任 | |
中桐 伸五君 | 家西 悟君 |
本日の会議に付した案件
介護保険法案(内閣提出、第百三十九回国会閣法第七号)
介護保険法施行法案(内閣提出、第百三十九回国会閣法第八号)
医療法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百三十九回国会閣法第九号)
――――◇―――――
○町村委員長 松本純君。
○松本(純)委員 景気の低迷が長引く中、介護福祉関係はビジネスチャンスとして期待されているだけに、制度の構造によほど注意しないと、薬漬け医療ならぬケア漬け福祉の批判を生み、医療制度同様の問題を抱え込んでしまう危険性が秘められていると思います。厳しい財政のもと国民に負担を求めるに当たっては、新たな投資よりも既存の社会資源を有効に活用し、合理的で安価で質の高いサービスの給付を行う必要があると思います。そこで、桧田委員に引き続き、別の観点から医療、介護、福祉の分野にわたる幾つかの質問をさせていただきたい。
まず初めに、医療法についてでありますが、医療法の一部を改正する法律案につきまして、改正医療法の第三十条の三第二項の五号にあるように、医療計画の必要記載事項の見直しが行われることとなっております。平成八年四月二十五日付の医療審議会の意見具申によれば、かかりつけ薬局による医薬分業について記載することとされておりますが、医療計画では医薬分業についてどのような内容のことを記載することとしているのか、そのお考えをお聞かせください。
○谷(修)政府委員 今回の医療法の改正におきましては、地域医療の体系的な整備を図るというような観点から、医療計画について、二次医療圏ごとに、医療機関、薬局その他医療に関する施設の相互の機能の分担、業務の連携、施設の整備目標等の事項を必ず記載する、いわゆる必要的記載事項にするということにしたいというふうに考えております。今お尋ねの医薬分業ということにつきましては、病院、診療所と薬局との機能の分担、業務の連携という形で記載をされることになるというふうに考えております。
医薬分業の具体的な内容をどこまでどういうふうに書くかということにつきましては、改正医療法を施行する際に医療計画作成指針といったようなものを示したいというふうに考えておりまして、指針の内容として、今後検討していかなければいけませんが、かかりつけ薬局の整備ですとか、医薬分業についての処方せん応需体制の整備といったようなことを指針の中に盛り込むというような形で考えていきたいと考えております。具体的な内容については、関係者の御意見を十分聞いた上で決めていきたいと考えております。
○松本(純)委員 介護保険制度は介護保険料という新たな国民負担を求めるものであり、それだけに、国民に対し十分な周知を図り、理解を得る必要があると思います。
高齢者介護福祉については、今日、ゴールドプラン等に基づいてホームヘルプ事業、特別養護老人ホーム等の介護福祉施設の整備、介護施設などにおけるデイサービス、ショートステイサービス等の事業が行われておりますが、これらの事業は介護保険制度創設後は介護保険の給付サービスとして実施されることになります。したがって、これらの現在の事業については国民によく知ってもらうことが必要だと思いますが、十分周知されるには至っていないとも聞いております。
医療保険によって病院などで医療を受ける場合と異なり、介護保険制度で介護給付を受けるための手続は複雑で、一般国民にとって容易なものではないように思われます。現在の制度でも、特に高齢者だけの家族の場合、どのような介護サービスが受けられるのか、どのような手続を踏めばよいのか、よくわからないという声をよく耳にします。
このため、岩手県では、県が高齢者介護福祉サービスについて県民に知ってもらうために、介護制度街角相談モデル事業として、地域の薬局などを相談窓口として活用する事業を実施していると伺っております。厚生省で承知していらっしゃるか、お尋ねをしたい。
また、現在、全国には約六万九千の薬局、薬店がありますが、地域住民に最も身近な健康相談の窓口として存在しております。現在の介護福祉事業について周知のために、介護保険制度の実施後は介護給付の相談窓口として、地域の薬局、薬店を活用することは国民にとっても有用であり、また実際的であると思うわけであります。岩手県のような事業を拡充、実施して地域の相談窓口体制を整備することを検討すべきだと思いますが、いかがお考えでありましょうか。
○羽毛田政府委員 御指摘の岩手県の事業につきましては、昨年私ども、各県の老人保健福祉計画の進捗状況を聞き取りをいたしました際に、岩手県から、在宅介護支援センター事業の促進策としまして御指摘のようなモデル事業をやっているということで、その概要を御説明をちょうだいしておりましたので、私ども承知をいたしております。そして、私どもとしても、一つの有用な方法かということで、全国の担当者会議等の場を通じまして全国にもこれを紹介するというようなことをやってきております。
先生今御指摘のように、地域のさまざまな社会資源を活用しまして、住民の身近なところで、これが大事なところだと思いますが、住民のできるだけ身近なところでの相談あるいは情報提供ということを行う取り組みにつきましては、地域の要介護ニーズを発掘する、あるいはそれを地域のそういった資源に結びつけていくという意味から大変大事なことだというふうに思います。
そのようなことでございますので、私どもとしましても、今後とも、地域の実情に応じました独自の取り組みに関しまして積極的に情報を収集、紹介する、それから地域の創意工夫、そういったものが全国に有用なものは広がっていくというようなことについて努力をしてまいりたいというふうに思います。
○松本(純)委員 昨年の一月、厚生省はシルバーマークに係る国の関与を廃し、都道府県に通知しました。通知の趣旨は、行政関与により民間事業の活動を不当に制限することがないようにする配慮と理解をしております。その経過及び理由についてお伺いをしたい。
また、最近、地域で介護機器関連企業等が介護福祉機器協会というような組織をつくる動きがあると聞いておりますが、中には、入会金が高額で、零細な介護用品などの供給業者が参加することは難しいというような例もあるようであります。このような組織は、大手企業が中心となり、地域の零細企業に対しては排他的なものとなりかねません。せっかく厚生省が通知を出しても、地域で同様の仕組みがつくられてしまうのでは意味がありません。厚生省は、こうした実態をきちんと把握しておられるのか、また、必要な対策についてはどのように考えておられるのか、お尋ねします。
○羽毛田政府委員 シルバーマーク制度でございますけれども、これにつきましては、当初の私どもの目的としましたところは、利用者が安心して良質なサービスを選択できるということがこういったお年寄り向けのサービスの場合は大事でございますから、そういった際の目安になるものといたしまして、社団法人のシルバーサービス振興会が認定、交付をするということで、いわば民間の動きとしてそういうことをしていただいているわけでありますが、これに対しまして、厚生省では、民間事業者への在宅サービスの委託を推進するという観点から、平成元年以降でございますけれども、市町村に対しまして、シルバーマークを取得した事業者に極力委託をするようにという指導をしてきたわけであります。
しかし、こういったシルバーマークに係りますいわば公の関与、国の関与というものにつきましては、一つには、もう既にシルバーサービスの普及ということが、そういう公がてこ入れをするというよりは、民間の自律に任せる段階に来ているではないかという御議論と、もう一つ、逆に、そういう形でシルバーマークにいわば公が関与をすること、シルバーマークに係る国の関与をすることによって、むしろ、競争制限的にといいますか、新規参入を妨げるような形になっているのではないかという御指摘を行政改革委員会等からいただきました。そういったことを踏まえまして、本年の一月に廃止をするということで、そのようなことを、廃止を実施したわけでございます。
その際に、先生、二点目でお話のございました、こういったものが、国の今の関与だけではなくて、地方公共団体レベルあるいは民民規制的な形で、いわば民間の形の中でもそういった競争制限的になることについては、私どもとしても、そういうことにならないようにということの周知徹底ということは、都道府県等を通じまして周知徹底を図ってまいりました。
今般廃止をされましたシルバーマークに係ります国の関与と同様のことが地方公共団体レベルでやられている、そういった特定の認証制度に対して地方公共団体が関与しているというような事例については、私どもまだ承知をいたしておりませんけれども、今後とも、今申し上げましたような趣旨にのっとって、今回、シルバーマーク制度に対して国の関与を廃止した趣旨というものが国といわず地方公共団体といわず徹底をしますように、関係機関とも連携をしながら、良質な介護サービスの提供の確保に努めながら、そういった方向を目指してまいりたいというふうに思います。
○松本(純)委員 次に、医療法に関して、病院、診療所における薬剤師の新たな職務についてお尋ねします。
医療法改正案第一条の四第二項においては、医療の担い手に、医療を受ける者への適切な説明とその理解を得るよう努めることが求められております。さらに、厚生省の各検討会の報告では、医薬品情報管理業務を薬剤部門が中心となって実施する重要性、治験担当医師を支援すべき治験担当薬剤師の配置の必要性、あるいは副作用情報の収集、評価に当たってチーム医療の中で薬剤師が一定の役割を果たすことができる体制整備の必要性が指摘をされております。病院診療所薬剤師は、従来から行っている調剤、病棟業務等に加えて、それら情報提供の徹底、治験の支援、副作用情報の収集、評価等、医薬品の適正使用を推進しなくてはならないと考えます。また、来月から施行される改正薬剤師法でも、患者またはその看護に当たっている家族等への、調剤した薬剤に関する情報の提供が義務づけられることになります。今後、病院診療所薬剤師に求められる期待がますます大きくなると感じられますが、業務局長の見解をお聞かせいただきたい。
また、病院診療所薬剤師には、従来の業務に加えて、医薬品市販後調査の支援、副作用情報の管理等の遂行が求められます。医療審議会の意見書の中には、「病棟単位に薬剤師一人を配置するなど入院患者数等を考慮した基準に見直すことが適当」と記されております。薬剤師法改正の目的、そして厚生省の各委員会の報告の目的を果たすためには、病棟業務及び調剤業務ばかりではなく、それらを行う薬剤師数の配置が必要です。国民が望む医薬品の適正使用を推進するために、今後、医療法改正に伴い省令で検討されることになると思いますが、健康政策局長の御見解を伺いたいと思います。
○丸山政府委員 前半のお尋ねに関しまして、近年、社会の急速な高齢化あるいは医療技術の高度化など、医療をめぐる状況は大きく変化してまいっておりまして、医薬品の適正な使用を確保していく上におきまして、薬剤師の方が医薬品の専門家として、他の医療関係者と連携しながらその責務を果たしていくことが重要であると考えております。
病院、診療所におきます薬剤師の業務は、従来、調剤ですとか病棟からの請求に応じた医薬品の供給など、ややもしますれば臨床の場から離れた薬局の中での業務が中心だったと考えております。しかしながら、近年、作用が強く、取り扱いに注意を要する医薬品が増加しておりまして、薬剤師の方が入院患者に対して直接、薬歴管理、服薬指導などを行うとともに、そこで把握された情報を医師や看護婦へフィードバックするなど、薬剤師が臨床の現場において医療チームの一員として積極的に取り組むことが期待されているわけでございます。
一方、医薬品の安全性に対する国民の関心が高まっております中で、治験から市販後に至ります各段階におきます医薬品の安全対策の充実強化が求められておりまして、昨年六月に薬事法等の一部改正の法律が成立いたし、この四月から施行の運びとなっておりますけれども、ここにおきましても、薬剤師の方の役割が期待されております。
まず、改正薬事法の一つの柱でございます治験の適正化につきましては、これを適切、円滑に実施するため、医療機関におきます体制の整備が必要でありまして、治験担当医師に加えまして、これを支援すべき治験担当薬剤師など、いわゆる治験支援スタッフを確保していくことが重要であります。現在、厚生省におきましてGCP適正運用推進モデル事業を実施しておりますけれども、こうした試みを通じまして、具体的な薬剤師の方の治験への関与の方途についても明らかになっていくものと考えております。
また、改正薬事法のもう一つの柱であります市販後の医薬品の安全対策につきましても、質の高い副作用情報が医療機関から積極的に提供されることが不可欠でございまして、来年度から、モニター病院制度を改めまして、すべての医療機関からの副作用情報を求めることとしておりますけれども、こういったことも、病院におきまして、いわゆる医薬品情報管理室、DI室を中心にした副作用情報の収集、評価、分析を行うなど、薬剤師の方の積極的な関与が求められている次第でございます。
さらに、薬事法と同時に改正されました薬剤師法におきましても、患者あるいはその看護に当たっておられる家族などへの、調剤した薬剤に関する情報提供が義務づけられるようになった次第でございます。
このように医薬品の適正使用のほかに、治験あるいは市販後における各般の医薬品安全対策の充実が図られるためには、病院、診療所における薬剤師の方、現在四万五千名ほどの方が勤務されておりますが、この役割が今後ますます大きくなるものと考えております。これに対応して、厚生省といたしましても、薬学教育、実務研修を中心とした生涯研修の強化などによりまして薬剤師の方の資質の向上を図るとともに、薬剤師業務の充実などの環境整備に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
○谷(修)政府委員 後段の病院薬剤師の人員配置基準の見直しについてお答えをさせていただきます。
医療におきます薬剤師の役割、特に病棟業務がふえてきた、薬歴管理あるいは服薬指導、そういう業務がふえてきたということで、これを見直していく必要があるということは医療審議会からも御意見をいただいております。私どももそのように考えております。
そういうことで、医療法改正の施行に合わせまして、今後、病棟業務の今申し上げましたような薬剤師の役割の拡大、変化ということを踏まえまして、具体的な配置基準を関係者の御意見も聞きながら検討してまいりたいと考えております。
○松本(純)委員 次に、介護法に関連し、療養型病床群や介護力強化病院における診療包括化についてお尋ねをいたします。
施設介護サービスとして、現在、医療保険の対象となっている療養型病床群や介護力強化病院、老人保健施設などの介護型施設を介護保険に移行させることを考えていると思うわけでありますが、介護保険制度における介護給付に対する費用は、医療保険のようないわゆる出来高払い制ではなく、包括点数制と聞いております。包括制は、医療保険においても既に一部で採用されており、薬剤費の節減や不必要な検査の抑制に有用であると言われておりますが、その一方、医療の質を低下させるのではないかとの懸念もあります。
例えば、平成四年の第二次医療法改正により療養型病床群制度が新設されましたが、その際、療養型病床群の投薬、検査、看護などの技術料が丸められ、包括点数とされました。そして、病院薬剤師の病棟臨床薬剤業務もその包括点数の中に丸められました。このため、名古屋市のある病院で、薬剤部が病棟業務を開始した直後、その病院が療養型病床群の許可を取得したため、病院経営者が病棟業務を中止してしまったという事例があったと聞いております。現在は、病院薬剤師の病棟臨床薬剤業務は包括点数から外され、独立した点数として設定されておりますが、この事例に見るように、包括制は医療の質を向上させようとする努力を阻害してしまいかねない面も持っております。
療養型病床群や介護力強化病院などを介護保険に移行させ、一律に包括点数を適用した場合、医療の質を下げてしまうということがないよう介護保険報酬上の工夫が必要と考えておりますが、いかがお考えでありましょうか、御質問します。
○江利川政府委員 介護保険制度が導入されますと、その法律のもとで適用されますサービスにつきましては介護報酬を定めるということになります。介護報酬唾施設の場合には、サービスの内容であるとか利用者の要介護度、それから事業所の所在地、そういうことを勘案しまして、平均的な費用をもとに定めるということになっております。具体的には、今後、介護費用の実態を調べまして、関係審議会の意見を踏まえて、適切な内容となるものにするということでございます。
療養型病床群とか介護力強化病院の関係でございますけれども、これにおきましても、要介護度別の定額制がやはり介護報酬の基本になるのだろうというふうに考えておりますが、適切なサービスが提供されますように、それに当たりましては十分な工夫、そういうものを検討してまいりたいと思います。
○松本(純)委員 次に、介護法に関連し、老健施設における薬剤管理指導の重要性についてお尋ねします。
高齢者は医薬品の使用頻度が高く、また、老齢化によって肝臓や腎臓機能が衰えており、若年層以上に薬剤使用についての指導、管理が必要と言われております。特に寝たきり老人等の要介護者のほとんどが医薬品を使用していると言われ、要介護者のADLやQOLに対する医薬品の副作用の影響は大きいと言われております。このため、高齢者介護には薬剤使用についての指導や管理が重要な項目であるとされております。
ところで、このような高齢者に対する薬剤の安全確保の重要性が指摘されているにもかかわらず、現在の老人保健施設の施設及び設備、人員並びに運営に関する基準に関する厚生省の通知によれば、三百人未満の老人保健施設では薬剤師の配置の必要はないとされておりますが、その理由が何か、お尋ねをいたします。
また、老人保健施設の患者のほとんどが医薬品を使用していると思いますが、調剤や患者に対する服薬指導はだれが行っているのか。
さらに、例えば老人保健施設を併設している病院の薬剤部が調剤を担当しているとも言われておりますが、実態はどのようになっているのか、また、法的に問題はないのか。
そして、薬剤師法の改正により、この四月から調剤時の薬剤師の患者への情報提供義務が実施され、一般の医療機関や薬局の服薬指導が強化されることとなりますが、老人保健施設では情報提供や服薬指導は必要ないのでしょうか、あわせてお尋ねをいたします。
○羽毛田政府委員 老人保健施設におきます薬剤師の方の配置につきましてのお尋ねでございます。
御案内のとおり、老人保健施設と申しますのは、その入所対象者は、本来、急性期の治療が一応終わりまして病状安定期に入ったということで、積極的な入院治療というよりは、むしろ、リハビリテーションでございますとか看護、介護といったような医療ケアを中心に提供していく、あるいは日常生活上のお世話をしていくというようなことを主体にした、いわゆる寝たきり老人等の方々のいわば中間施設ということで位置づけられているものでございます。したがいまして、濃厚な投薬だとか治療というようなものは本来的には想定をされていない、そういう老人保健施設としての性格がございます。
そうしたところから、今先生お述べになりましたように、病院あるいは専属薬剤師が配置されております診療所に併設されている場合は除きまして、入所定員が三百人以上の大規模な老人保健施設につきましては薬剤師を必置といたしますけれども、それ以外のものについては施設の実情に応じた数を配置することでいいということにいたしているわけでございます。
しかし、老人保健施設には医師が必置ということでございますから、今、薬剤師が配置されていない、そういったような老人保健施設にございます場合には、通常、この医師が調剤、服薬指導を行うということが行われているわけでございます。
実態でございますけれども、平成七年の調査報告でございますが、平成七年十月現在で申しますと、その時点で全国に千百九十五の老人保健施設がございましたけれども、その中で、専任が二十三人、兼任が三百九十人、合計四百十三人の薬剤師ということでございますから、今お述べのございましたように、実態的にも専任あるいは兼任の薬剤師を置かないところがございます。それから、そういった兼任の薬剤師が調剤を行うということについては、法的に問題はないものというふうに私ども考えております。
そこで、さらにお尋ねのございました、調剤時の情報提供、服薬指導というものは老人保健施設においても必要ではないのかというお尋ねでございます。
当然、私どもとしても先生と同じように考えているわけでありますけれども、老人保健施設の入所者に対しましても、薬剤の投与が行われる場合にございましては、必要に応じまして、薬剤の情報提供、服薬指導が行われるべきものであるというふうに考えておりますし、それは、もし薬剤師が配置されていない老人保健施設の場合には、医師が必置でございますから、医師の方々にこういうことをやっていただくという実態になっておるということでございます。
○松本(純)委員 介護法に関連し、老健施設における薬剤給付と薬剤師配置についていろいろとお話をいただくところでありますが、老人保健施設は入所者三百人未満の場合は薬剤師を置かなくてもよいこととされている一方、老人保健法の規定による医療並びに入院時食事療養費及び特定療養費に係る療養の取扱い及び担当に関する基準によりますと、厚生大臣が定める以外、老人保健施設では院外処方せんを発行してはならないとされております。つまり、厚生大臣が定める場合だけ処方せんを発行してよいとされているわけでありますが、そのような場合として、抗がん剤については処方せんを発行してよいとされております。
一般の医療機関では、むしろ抗がん剤は患者への告知の問題があって処方せんは発行されない場合が多いのに、老人保健施設では逆に抗がん剤のみ処方せんの交付を認めています。この理由は一体何か、お尋ねをいたします。
そして、このように老人保健施設の薬剤管理に関する基準は、薬剤師の配置を不要としたり、高薬価の抗がん剤の処方せんの発行だけを認めるなど、余りに経営者的発想に偏り過ぎ、医薬品の適正使用、安全管理という視点が欠けているように思います。この際、これらの基準を再検討するとともに、老人保健施設における薬剤師の配置が必要と思いますが、御所見を改めてお伺いしたいと思います。
最後に、小泉大臣にお尋ねをしたいと思います。
逼迫する財政の中、国民に新たな負担を求めるには、合理的かつ効率的な医療・介護・福祉サービスが不可欠であります。現在の医療制度の問題点を改善しながら、医療保険制度を補完し、介護保険制度を構築していく必要があると思っておりますが、厚生大臣の御所見をお尋ねいたします。
○羽毛田政府委員 前段のお尋ねの部分につきまして、お答えをさせていただきます。
先ほどもお答え申し上げましたように、老人保健施設は、本来、濃厚な投薬とか治療は通常想定されないということでございます。したがいまして、老人保健施設におきまして、がんの治療というものが通常行われるという施設にはならないと思います。しかし、がんの病を持ちながら長期にわたってのいわゆるケアという面での部分が必要になってくるというような例外的な場合におきまして、抗悪性腫瘍剤の服用が必要な方も出てまいるわけでございます。
それにつきましては、その専門性といいますか、そういったことを考慮いたしまして、例外的に老人保健施設以外の医療機関からの処方せんの交付を認めるという形で、いわば例外の扱いをいたしておるということでございまして、そのことが一般的に、むしろ老人保健施設における積極的な投薬治療というようなものを本来想定しているということには必ずしもならないというふうに私ども考えております。
したがいまして、今の点についてはそのとおりでございますけれども、老人保健施設における薬剤師の配置について考え直すべきではないかという再度のお尋ねでございますけれども、今申し上げましたような老人保健施設としての性格ということからいたしまして、やはり、三百人というような大規模になりますれば、これは必置をするということにいたさなければならないと思いますが、それ以外のものにつきましては、施設の実情に応じた数という形でやっていくのが現実的であり、また現時点では合理的ではないかなというふうに考えておりますので、そういった薬剤師の配置されていないところにつきましては、医師による調剤や服薬指導という形でやっていくということでいきたいと考えておりますので、御理解を賜りたいというふうに思います。
後段部分につきましては、厚生大臣からお答えを申し上げます。
○小泉国務大臣 全体の財政構造改革の中で社会保障関係費をどう賄うかということなんですが、介護保険を導入するにしても、これから高齢者の保健福祉施設等、介護サービス等の施設は拡充していかなければならない。同時に、今まで医療保険で賄っていたところを今度は介護保険の方で賄って、効率的な費用の調整を考えていく。公費がふえる部分と、これから公費をそうふやすことができない、あるいは減らしていかなければならない点をどうやって調整していくか。
総論はみんな賛成してくれますけれども、各論に踏み込めば踏み込むほど、社会保障関係費の公費の抑制というのは容易ならざることだ。それだけに、効率的な、現在の資源をどう有効に活用していくかということが大事ではないか。ともかく最大限、今までの制度を見直して、努力していくしかないなというふうに思います。
○松本(純)委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。