松本純の海外リポート・外交

2009(平成21)年4月29日(水)〜30日(木)

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公務】官房副長官として麻生太郎総理大臣に随行

写真で綴る概要報告

中国・北京訪問

 


4月29日(水)晴れ

1000〜羽田空港発→北京首都空港〜1245

今回は、麻生総理とは空港で合流することになっていますので、横浜の自宅から空港へ向かいました。空港に先乗りして麻生総理をお迎えし、北京に向かって政府専用機で出発しました。北京首都空港までは3時間45分という非常に短時間のフライトでしたが、今日は早速、温家宝総理との会談がありますので、時間を惜しんで会談の事前準備に努めました。

1320〜現地情勢ブリーフ兼昼食会/大使公邸

北京首都空港からは、まず、宮本駐中国大使の公邸におじゃまし、現地情勢の説明を受けながら昼食をとりました。最近の中国の経済・社会情勢などについて、最新情報の報告をいただきました。

1430〜日本文化センター視察〜1515

大使公邸での昼食を終えた後は、国際交流基金が北京市内で運営する「日本文化センター」の視察を行いました。このセンターには、漫画など、日本の文化を中国の皆さんにご紹介するための展示品が多く並べられていました。
センターの視察では、日本の外務省が行っている「国際漫画賞」の受賞者である伊川(イセン)さんとの交流や、外国語大学で日本語を勉強された学生さんによる日本のアニメ「名探偵コナン」のアフレコ風景の視察、そして北海道を舞台にした、中国で一大ブームを巻き起こした「冷やかしお断り」という中国映画を撮影した監督さんとの懇談が行われました。映画やアニメといったものが持っている影響力の大きさというものを改めて実感しました。
文化センターの視察を終えた後は、宿舎である長富宮飯店に向かいました。

1700〜歓迎式典/人民大会堂北大庁

宿舎到着後は、短時間休憩を取り、その後、早速、今日の温家宝総理との首脳会談に向けた打ち合わせを行いました。温総理との会談に先立って、北京の人民大会堂で、今回の麻生総理の中国への公式訪問に対する歓迎式典が催されました。人民大会堂の中にある「北大庁」というとても大きなホール行われた歓迎式典はとても厳かなムードの中で行われ、また非常に多くの儀仗兵が参加するもので、圧巻でした。

1715〜温家宝総理との首脳会談/人民大会堂東大庁〜1930すぎ

歓迎式典を終えたら、引き続き、麻生総理は温家宝総理との首脳会談に臨みました。温総理とは、今月すでにタイのパタヤで首脳会談をおこなっており、麻生総理とは昨年来、早くも4回目の顔合わせとなりました。首脳会談では、@経済・ビジネス分野での対話・協力、A環境・エネルギー・気候変動問題、B国民交流の一層の促進、に焦点を当てて意見交換が行われました。また、中国が導入しようとしているIT製品に対する強制認証制度の問題や北朝鮮問題、新型インフルエンザ対策、北朝鮮問題や東シナ海資源開発問題、ギョウザ事件をはじめとする食の安全の問題といった非常に幅広い事項について、熱のこもった、また非常にかみ合った議論が行われ、会談は2時間以上にわたりました。日中という「永遠の隣人」同士の首脳として、非常に率直な、そして双方ともに、日中関係の将来につなげていきたいとの強い気持ちが感じられる会談となりました。

2030〜記者ブリーフ/宿舎

温総理との首脳会談の後には、温総理主催による歓迎晩餐会が行われましたが、私は、総理の首席随員として、政府を代表して首脳会談の結果を速やかに同行記者の皆さんにご説明する役割を負っていますので、晩餐会は失礼して、宿舎に飛んで帰りました。

会談が非常に多岐にわたる内容の濃いものであったので、記者の皆さんへの説明(記者ブリーフ)では、なるべくわかりやすく、ポイントをまとめてご説明するように努めました。日本にとって非常に重要で、また国民の皆さんの関心も強い日中関係に関わる重要な首脳会談ということもあって、記者の皆さんからは非常に多くのご質問をいただきました。


4月30日(木)晴れ

0800〜朝食兼打ち合わせ/宿舎

訪中2日目は、まず、朝食を兼ねた打ち合わせからスタートしました。今日も、胡錦濤国家主席との首脳会談や内外記者会見など、非常に忙しい一日になりますので、それに備えるため、朝食時から早くも仕事をスタートしました。

0830〜総理ぶら下がりインタビュー/宿舎

今日未明に、世界保健機関(WHO)で、新型インフルエンザの警戒水準が引き上げられたことを受けて、総理は、早速日本に連絡し、対策に万全を期すように指示を出されました。この状況を受けて、急遽、宿舎出発時にぶら下がりインタビューを受けることとなりました。総理から、今朝発出された総理の指示の内容について説明がありました。

0905〜「首都鉄鋼」視察〜0945

今日最初の公式日程は、北京市郊外にある首都鉄鋼という製鉄会社の工場視察でした。この工場は、日本の優れた環境技術を活用して、環境改善・エネルギー利用の効率化を実現したモデルとなる工場です。世界第一位の鉄鋼生産を行う中国と、世界に冠たる優れた日本の環境技術が組み合わさった、環境・エネルギー面での日中協力の好例といえるものです。

工場では、首都鉄鋼関係者の皆さんからご説明を受けた後、ヘルメットをかぶって工場内の運転室などを視察しました。このような具体的な日中協力が、環境という非常に重要な分野でも精力的に進められていることを肌で感じ、強い感銘を受けました。

●1020〜首都鉄鋼から宿舎へ移動

首都鉄鋼をあとに宿舎へ向かいました。途中天安門を通過しましたが、中国と日本の国旗が掲げられ、周辺には大勢の観光客が集まっていました。北京オリンピックで移動した工場等は元の場所に戻させない措置が講じられているようで、北京の空は一時の青空ほどではありませんが、以前よりよい環境になっているように感じました。
宿舎に到着するると、休む間もなく麻生総理は次のスピーチの内容の点検に入りました。本当にタフだなあと感じるのは、このような頭の切り替えの必要なときにいやな顔や疲れた顔を見せず、とても積極的に動かれることです。しかもいつも笑顔を絶やさず・・・。

1110〜日中次世代ビジネス・リーダーとの集い/宿舎

首都鉄鋼の工場視察から宿舎に戻り、次は、宿舎内で、日中の次世代を担う若いビジネス・リーダーとの昼食懇談会を行いました。懇談会には、私も青年会議所時代に非常にお世話になった岡田元会頭や安里現会頭をはじめとする日本側の日本青年会議所の皆さんと、中国の全青連などの関係者が大勢参加され、とても賑やかな懇談となりました。

また、懇談の冒頭には麻生総理が、「日中次世代リーダーに送る私の応援歌」と題した、非常に熱のこもったスピーチを行われました。「応援歌」と呼ぶにふさわしく、総理からは、次世代を担う若いリーダーの方々に対して、力強い激励のメッセージが伝えられました。総理は、最後に、拳を振り上げながら中国語で「日中の若人よ、頑張れ!(リーチョンニェンチンレン・ジァヨウ)」と述べて、スピーチを締めくくられました。

日本青年会議所は麻生総理と私がかつて携わった、ひとつの原点ともいえるところであり、その会議所のメンバーである元気な若手ビジネス・リーダーの皆さんのお話を伺うことができて、私個人としても、とても懐かしく、有意義で、楽しいひとときとなりました。皆さんから元気を分けてもらいました。

1400〜CCTVインタビュー/宿舎

その後、短い打ち合わせを経て、総理は、中国の中央TV放送であるCCTVの単独インタビューを受けられました。

インタビューは、水均益さんという人気の高いキャスターによって行われました。内容は日中関係の展望などでしたが、中国側の日本との良好な関係を重視する姿勢が伺える、とても和やかな雰囲気でインタビューは進みました。このインタビューの内容は、これまでブレア・イギリス元首相やプーチン・ロシア首相なども出演した「トップ・トーク」という、中国の人気番組で放送される予定だそうです。

1615〜胡錦濤国家主席との首脳会談/人民大会堂福建庁〜1710

インタビューが終わり、次は胡錦濤国家主席との首脳会談です。宿舎で最終的な打ち合わせをすませて、人民大会堂に再び移動し、首脳会談に臨みました。麻生総理は、胡主席との間では、今月2日に行われたロンドン・サミットの際に会談を行って以来の会談で、温総理と同様、昨年来4回目の会談となります。胡主席との会談では、国際経済・金融情勢、北朝鮮問題、食の安全の問題などについて、非常に落ち着いた、友好的なムードの中で意見交換が行われました。1時間弱という短い時間での会談でしたが、非常に内容の充実した会談となりました。

1730〜内外記者会見/国際クラブ飯店〜1750

2つの首脳会談を終えて、本来ならほっと一息つくところですが、麻生総理は、会談終了後、すぐに宿舎近くの国際クラブ飯店に移動して、国内外の記者の皆さんに対して今回の訪問の成果などについてお話しする内外記者会見に臨まれました。会見では、新型インフルエンザ対策、北朝鮮問題、日中協力の進展状況、衆議院の解散を巡る考え方などについて質問が出されました。この会見の模様は、NHKで生中継されました。

1800すぎ〜記者ブリーフ

内外記者会見を終えて、総理は、公式日程をすべて終えられましたが、私は、今夕行われた胡錦濤主席との首脳会談に関する記者ブリーフという重要な仕事が残されています。国際クラブ飯店から宿舎に戻ってすぐに準備をすませ、同行記者の皆さんに、会談の結果をご説明しました。昨日の温家宝総理との会談と同様、日中関係に対する関心の深さが感じられる、非常に熱心なご質問を多数いただきました。帰国に向けた出発まで残された時間が余りありませんでしたので、簡潔に、しかし誠実にお答えするよう、心がけました。

1940〜北京首都空港発→羽田空港〜2355

その後、宿舎で短時間の夕食を麻生総理と一緒にとらせていただいてから、北京首都空港に移動し、羽田空港に向けて政府専用機で出発しました。帰りは3時間のフライトで帰国となりました。

▼所感

今回の麻生総理の中国訪問は、毎年、一方の首脳が他方の国を訪問するという日中間の合意に基づいて行われたものです。麻生総理は、胡主席、温総理との間で、この半年の間にそれぞれ4回もの会談を行っています。非常に重要な日中関係を進めていく上で、このような緊密な意思疎通ができることは、とても重要なことだと思います。

2回の首脳会談では、新型インフルエンザ対策や、「戦略的互恵関係」の推進に向けた協力、北朝鮮問題などについて、活発な意見交換が行われました。その結果、世界金融・経済問題に関する一層の協力、環境・エネルギー・気候変動問題に関する対話と協力(石炭火力発電の省エネや黄砂・酸性雨などの広域大気汚染対策など)、そして近年ますます活発になっている日中両国民の交流の一層の推進などについて、大きな成果が得られました。

2日間という非常に短い滞在でしたが、今回の訪問は、とても中身の濃い、実りある訪問となったと、強く感じました。総理が繰り返しおっしゃっているとおり、日中両国は、「永遠の隣人」であり、ともに手を携えながら様々な課題に取り組んでいくことによって、「共益」関係を築くことができる、とても重要な関係にあります。麻生総理の下で進められている中国との「戦略的互恵関係」は、まさにこのような考え方に基づいています。近しい関係であるが故に、さまざまな課題などにも直面することはありますが、両国首脳間での緊密な意見交換によってそれを適切に乗り越え、「共益」関係を推進していくことは、日本にとっても重要であると、改めて感じました。

そして、私自身、このように重要な日中関係においても、その他の国々との関係と同様に、率直な意見交換を通じて課題克服に粘り強く取り組む「麻生外交」を支えることの重要性と責任を、ひしひしと感じる2日間でした。

日本に帰ってからも、補正予算やさまざまな重要法案を巡る国会対応など、まだ多忙な日々が続きますが、引き続き、内閣官房副長官として、麻生総理を支えながら、精一杯頑張っていきたいと思います。


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