松本純の海外リポート・外交 |
2009(平成21)年4月10日(金)〜12日(日) |
【公務】官房副長官として麻生太郎総理大臣に随行
写真で綴る概要報告
ASEAN関連首脳会議 (タイ・パタヤ) |
4月10日(金)晴れ タイへ出張
●1700〜総理記者会見/官邸会見室
平成21年4月10日、麻生総理は総理大臣官邸で記者会見を行い、追加の経済対策となる「経済危機対策」を発表しました。
●1830〜ASEAN等会合出席(総理随行)のため羽田空港発→タイ・ウタパオ国際空港へ
総理記者会見での侍立を終えて、執務室に戻ったら、すぐにタイへ向けて出発です。急いで資料をまとめて、総理公邸の前から車列で出発。羽田空港から、政府専用機で、東アジア首脳会議等が開催される予定のパタヤ(タイのバンコク南方)近郊のウタパオ国際空港に向けて出発しました。ウタパオ国際空港までは7時間弱のフライトでした。
ウタパオ国際空港に到着したのは、深夜23時30分でしたが、気温は27度。同じ日にスコールが降ったとのことで、そのせいか、湿度もものすごく高く、着陸してしばらくすると、飛行機の窓が湿気で曇るほどでした。到着後、車列でパタヤ市内にある、宿舎であるアマリ・リゾート・ホテルには約40分後の24時過ぎに到着しました。
官邸出発前に、パタヤ周辺で大規模な反政府デモが行われているとの情報があり、心配していましたが、とりあえず、空港から宿舎まではスムーズに移動できました。
4月11日(土) 松本純の誕生日
●0900〜朝食会兼総理勉強会/宿舎
たくさんの観光客がパラセーリングで楽しむパタヤ・ビーチの先端に見えるのが今回のメイン会場です。
朝、起きてみると、昨日に引き続き、パタヤ市内では、反政府の象徴である赤いシャツを着た多くの群衆がデモを行っていました。タクシーで道をふさいでいる様子が、宿舎の部屋の窓からも見えました。
朝食をとりながら、今日予定される各種会合での対応ぶりについて打ち合わせをしましたが、聞くところによれば、今回の会議に参加する予定の中国の温家宝総理、韓国の李明博大統領は足止めを食らい、滞在先のホテルからでられない状況とのこと。朝食を終えた後も、引き続きタイ政府等と連絡を取り合うなど、情報収集に努めましたが、結局、私たちも同様に足止めをくってしまい、本日予定していたASEAN関連の首脳会合の会場には行けなくなってしまいました。
この状況を受けて、急きょ、さまざまな調整を行った結果、中国、韓国の首脳がすぐ隣にあるホテルに滞在しているので、午後に、そのホテルで、中国、韓国の首脳との首脳会談を行うこととなりました。
●1300〜日中首脳会談/ドゥシット・リゾート・ホテル〜1350
中韓首脳の宿舎である、ドゥシット・リゾート・ホテルに到着し、まずは、温家宝総理との首脳会談を行いました。この首脳会談では、おもに北朝鮮問題、日中関係について意見交換を行いました。
麻生総理からは、北朝鮮に対し、国連安保理が一致して、強いメッセージを迅速に発出することが重要であると強調しながら、安保理決議を採択することが望ましいとの日本の立場を説明しました。その結果、
安保理決議の形式についての結論は出ませんでしたが、日中首脳は、国際社会が一致して、迅速に、はっきりとしたメッセージを発出することが重要との点で一致しました。
また、日中関係についても、今月29日からの麻生総理の訪中や、東シナ海資源開発、「食の安全」問題などについても、やりとりをおこないました。
北朝鮮のミサイル発射問題を受けて、両首脳の間で、非常に緊迫感のある、真剣な議論が行われ、首脳外交の真髄に触れた気持ちがしました。
●1415〜日韓首脳会談/ドゥシット・リゾート・ホテル〜1455
つづいて、同じホテル内で、韓国の李明博大統領との首脳会談を行いました。この会談でも、おもに北朝鮮のミサイル発射問題について意見交換がなされました。会合では、国際社会の一致した強いメッセージを発出するためには、安保理決議を採択することが望ましいとの日韓両国の立場が確認され、六者会合についても、日韓で連携して、粘り強く取り組んでいくことで一致しました。
●1500〜日中韓首脳会談/ドゥシット・リゾート・ホテル〜1530
さらに、引き続いて、日中韓三か国での首脳会談に移りました。この会談も、主要な議題は北朝鮮問題となりました。この会談でも、麻生総理は、日本の立場を説明しながら、日中韓で連携して、北朝鮮に対して早期に、そして最大限に強いメッセージを発出できるよう、ニューヨークでの作業を加速させることを提案し、三首脳の間でそのような指示を出すことで一致しました。
●1715〜総理ぶら下がり会見/宿舎〜1730
日中、日韓、日中韓の3つの首脳会談を行っている間に、タイ政府は、今回のデモを受けて、パタヤ市内などに非常事態宣言を発出することを発表し、また、今日から行われる予定であった、ASEAN関連の首脳会議や東アジア首脳会議を延期することを発表しました。これを受けて、すぐに各種の調整を行い、今日夜にタイを発ち、日本に帰国することとしました。
そこで、麻生総理より、同行記者の方々に対して、今回のタイ訪問の結果についてご説明するために、ぶら下がり会見を行うこととしました。
会見では、総理より、今回、予定されていた会議をおこなうことができなくなったことは非常に残念であるが、タイ政府としても最大の努力をされた結果と受け止めている、との発言がありました。また、総理より、日中、日韓、日中韓の各首脳会談の成果について説明しました。記者の方からは、北朝鮮問題について、さまざまな質問が出され、総理は、日本政府の立場について、力強く説明をされていました。
●1800〜記者ブリーフ/宿舎〜1820
総理会見の後、私はしばし総理から離れ、同行記者の皆さんに日中、日韓、日中韓の各首脳会談でのやりとりについて、政府を代表してご説明しました。宿舎出発時間が迫っていたこともあって、少し駆け足での説明になりましたが、非常に重要な北朝鮮問題が中心議題となった会談の説明ですので、急ぎながらも丁寧な説明ができるように心がけました。記者団の皆さんも、時間に追われて、いつも本当にご苦労されていると思います。
●2000〜ウタパオ国際空港発→羽田空港へ
記者ブリーフを終えて、ごくごく短時間の空き時間を利用して、夕食をおなかに詰め込みました。急きょ帰国することになったため、政府専用機では機内食は用意できないとのことでしたので、時間に追われながら、急いで食事を済ませました。食事を済ませると、もうすぐに空港に向けて出発です。 約40分の車列移動を経て、政府専用機に乗り込み、20時にウタパオ空港から羽田に向けて出発しました。
4月12日(日)晴れ 一日早くタイ国より帰国
●0400〜羽田空港着
羽田空港までは、約6時間のフライトで、到着はまだ夜も明けきらぬ午前4時となりました。
▼所感
今回は、本来、ASEAN関連の首脳会議と東アジア首脳会議に出席するためにタイを訪問したのですが、会議は開催することができなくなってしまいました。非常に残念ではありましたが、総理もぶら下がり会見でおっしゃっていたとおり、タイ政府としても、最大の努力を尽くされた結果であったのだろうと思います。
ASEAN関連の首脳会合などは行われませんでしたが、非常に重要な北朝鮮問題について、中国、韓国の首脳と、非常に実りある会談が行えたことは、今回のタイ訪問の大きな成果であったと思います。現在、ニューヨークにある国連の安全保障理事会で、ミサイル発射を行った北朝鮮に対してどのようなメッセージを出すべきかについて議論が行われています。この重要なタイミングに、日中韓という東アジアの主要国間でこの問題について首脳レベルの意見交換が行えたことは、大きな意味があったと思います。
麻生総理は、温家宝中国総理、李明博韓国大統領との首脳会談に、そしていい意味で緊迫感をもった態度で臨まれ、非常に率直に意見交換を行われました。首脳外交にふさわしく、非常に中身の濃い、迫力のある会談となりました。
私も、今回の外遊で総理の外交出張への同行は10回目となりましたが、今回のようなデモでの会合延期というのは、はじめての経験でした。今日は私の59回目の誕生日でしたが、個人的にも、記憶に残る一日となりました。
これからも、経済対策や外遊・外交日程が目白押しで、帰国してからも気が抜けない日々が続きますが、麻生総理を支えて、強く明るい日本を作り上げていくために、全力を尽くしていきたいと思います。