松本純の海外リポート・外交

2009(平成21)年1月11日(日)〜12日(月)

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公務】官房副長官として麻生太郎総理大臣に随行

写真で綴る概要報告

日韓首脳会談 (韓国・ソウル)

 


1月11日(日)晴れ 日本→韓国ソウル

●0910〜羽田空港発

今日から、麻生総理の韓国訪問に同行します。休日出発のため、総理は私邸からの出発ということで、私も、横浜の自宅から羽田空港に向かいました。空港には先着して総理と合流し、政府専用機でソウルの空軍基地に向けて出発しました。韓国は、最高気温がマイナス4度、最低気温はマイナス14度という寒さという話もあり、体を壊さないようにがんばってきたいと思っています。

●1210〜国立顕忠院訪問〜1220

ソウルの空軍基地には、2時間半ほどで到着しました。空港では儀仗兵による歓迎式典で迎えられ、そこから直接、韓国の殉国者を祀るための国立墓地である国立顕忠院(けんちゅういん)に向かいました。国立顕忠院では、殉国者を追悼するための「顕忠塔」の前に参列し、麻生総理からの献花と焼香が行われました。私も参列の列に加わりましたが、非常に厳かな雰囲気の中での行事となりました。

●1300〜韓国経済主要4団体主催昼食会〜1430/宿舎

国立顕忠院での献花が終了してから、今回の訪韓の宿舎であるロッテ・ホテルに移動し、30分ほどの休息を経て、宿舎内での韓国経済主要4団体主催による昼食会に出席しました。
昨年12月の福岡での日韓首脳会談で、李明博(イ・ミョンバク)大統領から、日韓両国の経済界・産業界の交流と協力を促進させるため、韓国を訪問する際には、日本の経済界の方も一緒にいらしてほしいとのご要望を受けていたことをふまえて、今回の総理訪韓には、日本の経済界の重鎮18名が同行されました。
この昼食会にも、韓国側の経済4団体の方に加えて、日本の財界の代表者の方々も加わられ、有意義な意見交換が行われました。私は、麻生総理とともにメイン・テーブルに座り、御手洗経団連会長、トヨタの張会長らと歓談を楽しませていただきました。

●1530〜融合技術センター視察〜1600/漢陽大学

昼食会の後、麻生総理とともに、漢陽(ハニャン)大学を訪問し、この大学の融合技術センターを視察しました。融合技術センターは、国内外の研究機関と漢陽大学が連携を推進する目的で建設されたもので、日本との関係でも、理研(理化学研究所)との間で、理研が実施している生物の情報処理方法に関する基礎研究の成果を活用して、ナノテクノロジーの基礎研究を共同で実施しています。
今回は、平成13年にノーベル化学賞を受賞された野依良治博士にご案内いただき、このセンターにある研究室などを視察させていただきました。
また、視察の最後には、レッド・カーペットが敷かれた通路に学生さんたちが並び、総理としばし立ち話をする機会が設けられました。総理からは、学生さんたちに対して激励の言葉がかけられていました。また、視察終了後に、麻生総理は、同行の記者団の方たちに囲まれ、短時間のぶら下がりインタビューを受けられ、今回の視察の感想などを述べられていました。

●1645〜日韓高校生キャンプ参加者との交流〜1725/宿舎

その後、宿舎に戻り、2004年から行われている「日韓高校生交流キャンプ」の参加者とこのキャンプのOBの方たちとの交流が行われました。この交流に参加したキャンプ参加者からは、このキャンプの概要について説明が行われ、キャンプに参加して、お互いに対する印象が大きく変わった、といった経験談が紹介されました。また、総理からは、この計画が日韓の交流事業として成果を実際に上げていることを誇りに思う、一緒に生活し、一つの目標に向かって一緒に仕事をすることで、よりわかり合えるようになる、といった講評が述べられました。

●1800〜日韓首脳による懇談〜1820/青瓦台

交流会が終了した後、麻生総理は、韓国の大統領官邸である青瓦台に移動し、両国経済界関係者との懇談に先立って、李大統領との間で、短時間、少人数の懇談を行いました。この懇談では、両首脳の間で、昨年12月の福岡での日中韓首脳会談の成果が確認され、日韓の経済面での協力への期待などが表明されました。

●1825〜日韓首脳と日韓財界人との懇談〜1905/青瓦台

首脳間での懇談に引き続いて、日韓首脳と日韓両国の財界人との懇談が開催されました。懇談には、非常に大勢の日韓両国の財界人の方々が参加されました。この懇談では、趙(チョ)全国経済人連合会会長、御手洗日本経団連会長、岡村日本商工会議所会頭からご挨拶をいただくとともに、麻生総理、李大統領からの発言が行われました。両国経済界からは、経済面・産業面での日韓協力の促進に対する高い期待感が示され、また、現在の金融危機を乗り越える上での日韓両国政府の取り組みに対する期待が示されました。

●1930〜李明博大統領主催晩餐会〜2115/青瓦台迎賓館

懇談会の後、青瓦台本館から迎賓館へと移動して、李明博大統領主催の晩餐会が開催されました。晩餐会では、両首脳からの挨拶・乾杯の後、懇談が行われ、麻生総理と李大統領との間では、日韓両国の経済状況や米国経済の現状等につき意見交換が行われました。
また、晩餐会の後半では、韓国国立舞踊団による創作舞踊や韓国の少年少女合唱団による「ふるさと」などの合唱、ソウル日本人学校の小学5年生の生徒による合唱などが披露され、最後には、両国の子供たちが一緒になって、2002年の日韓ワールドカップ共催記念曲である「Together」の合唱が行われました。公演終了後には、麻生総理、李大統領が子供たちに囲まれ、握手をしたり、言葉を交わしたりする場面がありました。晩餐会に出された料理も、韓国の伝統的な宮廷料理ということで非常においしく、とても暖かで感動的な晩餐会になりました。

●2130頃〜麻生総理と重家大使/宿舎

重家大使に大変お世話になりました。最後までご一緒した重家大使と麻生総理の記念写真。


1月12日(月)晴れ 韓国ソウル→日本

●0815〜総理打ち合わせ〜0850/宿舎

今日は、日韓首脳会談とそれに続いて日韓首脳による共同記者会見が行われる予定となっています。その準備のため、宿舎内の総理のお部屋で、秘書官たちとともに朝食をとりながら、簡単な打ち合わせを行いました。打ち合わせの最中、今日のソウルは、この冬一番の冷え込みで、最低気温はマイナス20度近いとの韓国気象庁の発表がテレビのニュース番組から聞こえてきました。今日も、ソウルは寒い一日になりそうです。

●0900〜日韓首脳会談〜1000/青瓦台

打ち合わせ終了後、宿舎を速やかに出発して、昨日に引き続き、韓国大統領官邸である青瓦台に赴き、日韓首脳会談を行いました。麻生総理と李大統領が顔をあわせるのは、今回が既に5回目となり、両首脳は、すっかり気心が知れた仲になっているように見えました。そのようなこともあり、首脳会談は、これまで以上に中身が濃く、また和やかな雰囲気の中で行われました。
今回の会談では、両国の首脳が頻繁に行き来を行う「シャトル首脳外交」の定着が確認され、また「日韓新時代」、すなわち国際社会での日韓協力の具体化が合意され、さらには日韓関係の一層の深化が合意されました。その一環で、会談では、李大統領の今年の適切な時期での訪日や日韓両国の専門家達に共同研究を行ってもらう「日韓新時代共同研究プロジェクト」を近々発足させることについて合意されました。さらに、アフガニスタン支援における開発分野での協力の一層の強化についても合意されました。
北朝鮮問題についても議論がなされ、六者会合を通じて北朝鮮に核を放棄させる、という基本方針が確認されました。拉致問題についても、李大統領より「韓国にも多くの拉致被害者がいる。北朝鮮は、この問題の解決に協力すべきであり、日本と同じ考え方を持っている」との発言があり、我が国の努力に対する韓国政府の支持が改めて表明されました。

●1000〜共同記者会見〜1020/青瓦台

首脳会談の後、麻生総理と李大統領は、揃って共同記者会見に臨みました。会見は、非常に良好かつ着実に進展している今の日韓関係を象徴するように、とても友好的なムードで進行し、両首脳から、今回の首脳会談の成果について発表が行われました。

●1050〜韓日議員連盟による総理表敬〜1055/宿舎

共同記者会見が終わった後、李大統領に見送られながら青瓦台を離れ、宿舎に戻りました。麻生総理は、宿舎に着いた後すぐに、李相得(イ・サンドク)韓日議員連盟会長率いる、韓日議連メンバーとの懇談が行われました。李会長は、李明博大統領の実兄にあたる方で、これまで国会副議長を務められるなど、韓国議会の重鎮です。また、大統領特使として訪日されるなど、日韓間の友好関係の促進にも貢献してこられています。記者ブリーフのため、私は懇談を中座させていただきましたが、非常に和やかな雰囲気の中で懇談は進められていました。

●1110〜記者ブリーフ〜1130/宿舎

韓日議連との懇談を中座して、宿舎内にあるプレスセンターで、今日行われた日韓首脳会談の成果について、同行されている記者団の皆さんにご説明しました。これまでの会談を通じて築き上げられてきている日韓関係の前向きな雰囲気がきちんと記者団の皆さんに伝わるよう、一生懸命説明しました。記者団の皆さんからも、会談の内容に関連して、多くの質問を頂きました。

●1335〜ソウル空軍基地発〜1530

お世話になった上原研也リエゾン

総理は、韓日議連との懇談を終えた後、帰国後のテレビ収録に向けた打ち合わせを行われていました。私も、記者ブリーフを終えた後、急いでこの打ち合わせに合流しました。詳細な打ち合わせを終え、短い昼食をすませたら、もう韓国から帰国の途に着かなければなりませんでした。すぐに車列に飛び乗り、ソウル空軍基地から、政府専用機で日本に向けて飛び立ちました。

▼所感

今回の韓国訪問は、新年を迎えてから最初に行われた総理の外国訪問でしたが、今回の訪問は、本年を日韓関係の飛躍の年とする上で、非常に良いスタートとなったのではないでしょうか。
麻生総理が就任されてから3ヶ月余りの間に、もう既に5回も李大統領とお会いする機会が設けられました。このような頻繁な両国首脳の往来は、まさに「シャトル首脳外交」と呼ぶにふさわしいもので、今回の訪問によって、「シャトル首脳外交」が定着したことが、私にも実感できました。
麻生総理と李大統領は、ともにビジネス界のご出身ということもあってか、昨年10月に北京で初めての首脳会談を行った時から、とても息が合った対話を行われていましたが、これまでの頻繁で緊密な意見交換を通じて、その関係は、一層親密なものになったように思います。こうした首脳間の良好な関係の下、「近くて近い隣人」同士である日韓両国の関係が一層緊密で建設的なものとなっていくよう、私も官房副長官として、麻生総理をもり立てながら、精一杯努力していきたいと、決意を新たにしました。


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