松本純の海外リポート・外交

2008(平成20)年12月13日(土)

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公務】官房副長官として麻生太郎総理大臣に随行

写真で綴る概要報告

日中韓首脳会議 (福岡・大宰府)

 


12月13日(土) 福岡で日中韓首脳会議

●0800〜羽田空港発

今日、福岡県の太宰府にある九州国立博物館で日中韓首脳会議が開催されるため、羽田空港から政府専用機で出発しました。今回は、休日朝の出発と言うこともあり、麻生総理の車列には加わらず、別に、総理よりも先に空港に着き、総理の到着をお待ちしました。
約2時間のフライトで福岡空港に到着し、現地での盛大な歓迎を受けた後、福岡空港を後にして宿舎であるホテル日航福岡に到着しました。

●1100〜日韓首脳会談〜1152 /宿舎内

宿舎到着後、短い準備時間を経て、早速、麻生総理よりも先に福岡に入っておられた李明博(イ・ミョンバク)大統領との首脳会談が行われました。麻生総理と李大統領との顔合わせは今回でもう4回目になります。10月のアジア欧州会議(ASEM)の際に初めて首脳会談を行った時から既に両首脳の波長は非常に合っておられましたが、今回も一層うち解けた雰囲気の中、非常に充実した会談が行われました。
今回の会談では、日韓二国間関係、経済面での協力、北朝鮮問題が主要なテーマでした。会談では、両国の交流、特に若者の交流の強化や金融危機への対応での協力などが合意され、北朝鮮問題についても、引き続き緊密に連携して取り組んでいくことが合意されました。また、拉致問題については、李大統領より、「拉致被害者ご家族や日本国民の心情を誰よりも理解している」という日本の立場への支持が表明されました。

●1300〜記者ブリーフ〜1307 /福岡市役所

日韓首脳会談が終わった後、その成果について、記者の皆さんへのご説明(記者ブリーフ)を行いました。会談終了から、日中韓首脳会談の会場となる太宰府の九州国立博物館への出発までは非常に短い時間しかなかったのですが、麻生総理の会談内容について説明するのが、官房副長官の大事な務めの一つですので、昼食もそこそこに、事前準備を速やかにすませて、記者の皆さんが待っている福岡市役所に飛んでいきました。
途中の移動での交通渋滞などのハプニングもあって、非常に短時間しか説明時間が確保できませんでしたが、急ぎながら、しかし正確に、はっきりと、会談の成果について説明するよう努めました。駆け足での説明だったので、記者の皆さんも大変だったのではないでしょうか。

●1405〜日中首脳会談〜1500 /九州国立博物館

記者ブリーフを終えた後、急いで宿舎に引き返し、ぎりぎり麻生総理の太宰府への出発時間に間に合いました。福岡市内から、太宰府にある九州国立博物館へ移動してから、最初の行事は、中国の温家宝首相との首脳会談です。今年は、5回の相互訪問を含めて、日中間で非常に頻繁な首脳間の対話が行われた特別な年となりました。日中間では、「戦略的互恵関係」が着実に進展してきており、青少年交流なども活発化してきています。
今回の会談では、そのような二国間関係の進展が確認されるとともに、国際金融・経済問題への日中間の協力について合意されました。非常に友好的な雰囲気の中で、予定時間をオーバーして、とても活発な会談が行われました麻生総理からは、先日の尖閣諸島領海での中国調査船の進入事案について、遺憾の意が示され、再発防止を求めました。また、食の安全や東シナ海での資源開発などの二国間の懸案事項や北朝鮮問題についても、意見交換が行われました。

●1515〜日中韓首脳会議〜1700 /九州国立博物館

日中首脳会談に続いて、今回の福岡訪問の主目的である日中韓三カ国による首脳会談が行われました。これまでの日中韓首脳会議は、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に日中韓の首脳が参加する機会などを捉えて開催されてきましたが、今回、史上初めて、三カ国の首脳会議が独立して開催されるに至りました。歴史的に見ても、非常に意義のある会合であったと思います。
会議では、まず、三カ国間協力の進展状況と今後の展望について議論が行われ、「三国パートナーシップに関する共同声明」の発表が合意され、今後三国の持ち回りで、この「日中韓サミット」を年1回開催していくこととなりました。また、国際金融・経済の問題についても今後の協力について議論が行われ、金融危機が深刻化する中、三国が、それぞれ成長力強化や内需拡大に努めることの重要性などが確認されました。さらに、地域・国際問題についても、拉致問題を含む北朝鮮問題や、国連改革、環境、アフリカ、軍縮・不拡散などについて意見交換が行われました。
非常に率直で活発な意見交換が行われ、世界のGDPと貿易量のそれぞれ17%近くを占める日中韓三カ国の会談の実現は、東アジア地域だけでなく世界全体の安定と繁栄に大きく貢献できる、画期的な進展であると、つくづく実感しました。

また、日中韓首脳会議の後、今回の会議の成果文書(「三国パートナーシップに関する共同声明」)の署名式が、三カ国の首脳によって行われました。

成果文書の署名式の後には、日中韓の青少年による三首脳への提言が行われ、提言書が手渡されました。この提言は、日中韓それぞれから各100名の青少年が、「東アジアの安定と繁栄のために日中韓の青少年が果たすべき役割」というテーマの下、環境、高等教育、文化交流について討論を行って作成したものです。非常に立派な提言が行われ、若い方達のこうした活動をとても頼もしく感じました。

●1810〜共同記者会見〜1840過ぎ /九州国立博物館

その後、三カ国の首脳は、場所を移して、共同記者会見を行いました。NHKで生中継されていたようですので、ご覧になられた方もいらっしゃるのではないかと思います。
まず、今回の首脳会議の議長である麻生総理から、この三カ国による首脳会議を「第1回日中韓サミット」と名付けたい、この会議は「歴史の必然」とも呼ぶべき非常に重要な会議である、として、今回の首脳会議の意義と成果について、熱弁をふるわれました。また、中国の温家宝首相、韓国の李明博大統領からも、今回の会議が非常に意義深いものであったとの認識が示されました。

●1900〜記者ブリーフ〜1930 /九州国立博物館

共同記者会見の後には、麻生総理主催による三カ国首脳の晩餐会が控えていましたが、私は、まず記者の皆さんに「第1回日中韓サミット」の成果について説明をするという務めがありましたので、晩餐会に遅れて参加することとして、記者ブリーフに望みました。
今回は、記者の皆さんの多くが福岡市役所内のプレス・センターに残っておられ、太宰府から移動しての説明が物理的に難しかったので、通信回線を使い、テレビ・モニターを通じて、太宰府から福岡市内の記者の皆さんに説明する、という方法をとりました。モニターとカメラを目の前にして記者ブリーフを行うのは、私にとって初めての経験でしたが、会議の臨場感をリアルに伝えられるよう、丁寧な説明に努めました。

●1930過ぎ〜麻生総理主催晩餐会〜2015 /九州国立博物館

記者ブリーフを終えてから、麻生総理主催の晩餐会に遅れて出席しました。私が座ったテーブルには、姜萬洙(カン・マンス)韓国企画財政部長官、謝旭人中国財政部長(お二方とも、日本の財務大臣にあたる方)や麻生渡福岡県知事などの皆さんが一緒でした。晩餐会の最後には、日中韓のそれぞれの伝統楽器(日本の琴、三味線、笛、中国の胡弓、琵琶など)によるアンサンブル・チームの演奏が行われました。三カ国の楽器が、それぞれの伝統楽器を持ち寄って一つのハーモニーを奏でる、とてもすてきな演奏会になりました。このアンサンブルのように、これからの日中韓三カ国の関係も調和のとれた、協調的なものになっていけたらと期待しています。
李大統領の出発時間などの都合があり、晩餐会は20時15分頃にお開きとなり、私たちも、その後、福岡市内の宿舎へと戻りました。


12月14日(日) 北九州市視察→羽田

●0930〜環境関連施設の視察〜1100 /北九州市内

朝、麻生総理とともに朝食を済ませ、今日は、麻生総理の地元でもある北九州市に移動して、環境関連施設の視察を行いました。

まず最初は、若松区にある「北九州エコタウンセンター」の視察です。床に貼られた航空写真を用いたエコタウン全体の概要の説明を受け、その後、テレビのカットモデルや自動車のパーツなどの展示品を見ながら、リサイクルの方法などについて説明を受けました。

次に、同区にあるPCB処理施設(JESCO)を訪問し、パネルやカットモデル、払い出し物のサンプルや施設模型などを見ながら、PCB処理施設建設の経緯や処理方法の概要について説明を受けると共に、テレビモニターなどを用いたこの施設の情報公開に関する説明などを受けました。

続いて、若松区内に多数設置されている大型の風力発電施設が見渡せる「白島展示館」を訪れました。この展示館の2階にある屋外テラスから風力発電施設の大きな風車を遠望しながら、風力発電の概要などについて説明を伺いました。

その後、北九州市の八幡東区に移動し、同区にある「東田エコクラブハウス」を訪問し、低炭素型まちづくりの担い手の方々との懇談会を行いました。この地域では、「八幡東田グリーンビレッジ」という構想の下、市民全員参加による「環境共生型まちづくり」を進めておられ、その内容について、エコクラブを運営しているNPO代表の方などから、まちづくりへの取り組みについてお話を伺いました。

●1100〜総理ぶら下がりインタビュー〜1104 /東田エコクラブハウス前

懇談の後、今回の環境関連施設の視察について、同行記者の方たちによる、麻生総理へのぶら下がり取材が行われました。取材陣からの質問を受けて、麻生総理より、環境を産業に変える取り組みへの評価や、地域ぐるみ、街ぐるみで行われている環境への取り組みの重要性、そのようなモデル都市への応援の必要性が述べられました。

●1330〜環境モデル都市国際セミナーへの出席〜1350 /北九州国際会議場

その後、小倉区に移動し、同区内のホテルで昼食をとった後、麻生総理は、北九州国際会議場で開催されている「環境モデル都市国際セミナー2008」に出席されました。セミナーでは、麻生総理による挨拶の後、北九州市以外にも、日本の帯広市、富山市、横浜市、アメリカのポートランド市やドイツのフライブルク市なども参加し、自治体による環境問題への取り組みに関する宣言文が発表されました。私も、会場の最前列でセミナーを拝見しましたが、会場には想定以上の多くの人が来られ、500人収容の会場に700人近くの方が集まられ、200人近い方たちが会場外にあふれていたとのことで、非常に大盛況でした。

●1510ごろ〜福岡空港発

セミナーへの参加で、今回の福岡訪問の日程は最後になります。セミナーを後に、福岡空港へ向かい、福岡空港から政府専用機で東京に向かって出発です。
今回の麻生総理の福岡訪問は、日中韓首脳会議(第1回日中韓サミット)という、歴史的にも意義のある、非常に重要な会議への参加を主目的に行われました。麻生総理ご自身も、既にこれまでも中国・韓国の首脳と会談を行ってこられていますが、今回は、中韓との二国間首脳会談はもちろん、日中韓三カ国での首脳会議でも、今まで以上に、非常に活発で率直な意見交換が首脳間で行われ、非常に実りのある会議が行えたと思います。
日中韓は、東アジアの中はもちろん、世界全体の中でも、非常に大きな役割と影響力を持ちうる三カ国です。この三カ国が、独立した会合のために一つの場所に集い、そして三国間の協力や国際社会の諸課題などについて意見交換を行い、協力を深めていくことは、日本の国益という視点からみても、とても重要なことだと考えます。そして、この地理的にも、歴史的にも、文化的にも近いこの三カ国が集まり、共に協力していくこの会議の枠組みは、麻生総理が共同記者会見で言われていたとおり、「歴史の必然」なのではないかと、私自身、強く感じました。
この会議は、今後も年1回開催されていくこととなりました。次回は中国で開催される予定です。この重要な対話と協力の枠組みを通じて、重要な隣国である中国、韓国との間で、一層強固な絆が作りあげられていくよう、私も麻生総理を支える官房副長官として、今後一層、職務に励みたいと思います。

●1700ごろ〜羽田空港着

福岡での忙しい2日間を終え、羽田空港に到着しましたが、明日からはまた様々な政治日程が目白押しです。麻生総理は、休む間もなく、羽田空港から都内のホテルに直行して、明日からの国会日程等に備えるための勉強会に入られました。私も、空港から総理に同行して、勉強会に参加しました。


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